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運命の日
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昭和54年12月5日、久美子にとって運命の日を迎えた。
その日は、「それもこれも全部秘密です」の収録日だったからだ。
朝から落ち着かず、楽屋入りした後も部屋の中をウロウロと歩く久美子に、甲斐が腕を引っ張って椅子に座らせた。
「おい、久美子
もうなるようにしかならないんだから、ちょっと落ち着けよ。」
「だって…
もうお母さん、このスタジオにいるんでしょ?」
「見つかってればな。」
「見つかってない事もあり得るよね?ね?ね?」
「それは俺に聞かれてもわかんないよ。
その時が来ればわかる事さ。」
「司会の桂小銀三さんは、来てるか来てないか知ってるんじゃない?
ねえ、聞きに行ってもいいかな」
「ちょい待て
そんな事したら番組が成立しねーって
とにかく落ち着けって。
二時間後にはわかる事だ。」
「あー、もうダメだ
死にそう」
久美子は天を見上げ、声を上擦らせて言った。
そして、番組の収録が始まった。
前半は予定通り、ゲストによるクイズが行われ、和やかに進行していった。
既に久美子は舞台裏まで出てきて、自分が出演するコーナーが始まるのをソワソワしながら待っていた。
「友谷さん、もうすぐですので
ここでお待ちください」
ADに案内され、久美子はスタンバイした。
そして、いよいよ始まりを迎えた。
「続いては、運命の人探しますのコーナーです。
今日はレディーボーイタレントとして人気の友谷久美子さんをお迎えしております。」
久美子は紹介を受け、笑顔でお辞儀をし、スタジオに登場した。
久美子のプロフィール(一部京活プロが改竄)がスタジオで紹介され、小学校のときに離れ離れになった母の事も出てきた。
司会の小銀三は、久美子にマイクを向け
「友谷さん、ずっとお母さんに会いたかったんだね?」
と、質問した。
既に涙目の久美子は、頷き
「はい。一度も忘れた事はありません。
ずっと会いたくて会いたくて、今日まで来ました。」
と、語った。
「お母さんとの思い出は?」
「はい。
ワタシが幼稚園の時だったんですけど、父と母とワタシの三人で奈良にあるドリームランドっていう遊園地に行ったことです。
母の作ったお弁当を食べて、ワタシ一人がはしゃいでいた記憶があります。」
と、伝えた。
「お母さんに会えたら何て言いたい?」
「ずっと会えない間に、ワタシもオカマになってしまったりと、色々な事がありました。
親不孝な息子ですが、それでもワタシはあなたの子供ですって言いたいです。」
「わかりました。
さあ、果たしてお母さんは見つかったんでしょうか。」
小銀三は力を込めて言い、傍に下がり久美子だけが真ん中に残った。
ドラムロールが流れ奥のカーテンで仕切られたボックスをスポットライトとカメラが抜いた。
その日は、「それもこれも全部秘密です」の収録日だったからだ。
朝から落ち着かず、楽屋入りした後も部屋の中をウロウロと歩く久美子に、甲斐が腕を引っ張って椅子に座らせた。
「おい、久美子
もうなるようにしかならないんだから、ちょっと落ち着けよ。」
「だって…
もうお母さん、このスタジオにいるんでしょ?」
「見つかってればな。」
「見つかってない事もあり得るよね?ね?ね?」
「それは俺に聞かれてもわかんないよ。
その時が来ればわかる事さ。」
「司会の桂小銀三さんは、来てるか来てないか知ってるんじゃない?
ねえ、聞きに行ってもいいかな」
「ちょい待て
そんな事したら番組が成立しねーって
とにかく落ち着けって。
二時間後にはわかる事だ。」
「あー、もうダメだ
死にそう」
久美子は天を見上げ、声を上擦らせて言った。
そして、番組の収録が始まった。
前半は予定通り、ゲストによるクイズが行われ、和やかに進行していった。
既に久美子は舞台裏まで出てきて、自分が出演するコーナーが始まるのをソワソワしながら待っていた。
「友谷さん、もうすぐですので
ここでお待ちください」
ADに案内され、久美子はスタンバイした。
そして、いよいよ始まりを迎えた。
「続いては、運命の人探しますのコーナーです。
今日はレディーボーイタレントとして人気の友谷久美子さんをお迎えしております。」
久美子は紹介を受け、笑顔でお辞儀をし、スタジオに登場した。
久美子のプロフィール(一部京活プロが改竄)がスタジオで紹介され、小学校のときに離れ離れになった母の事も出てきた。
司会の小銀三は、久美子にマイクを向け
「友谷さん、ずっとお母さんに会いたかったんだね?」
と、質問した。
既に涙目の久美子は、頷き
「はい。一度も忘れた事はありません。
ずっと会いたくて会いたくて、今日まで来ました。」
と、語った。
「お母さんとの思い出は?」
「はい。
ワタシが幼稚園の時だったんですけど、父と母とワタシの三人で奈良にあるドリームランドっていう遊園地に行ったことです。
母の作ったお弁当を食べて、ワタシ一人がはしゃいでいた記憶があります。」
と、伝えた。
「お母さんに会えたら何て言いたい?」
「ずっと会えない間に、ワタシもオカマになってしまったりと、色々な事がありました。
親不孝な息子ですが、それでもワタシはあなたの子供ですって言いたいです。」
「わかりました。
さあ、果たしてお母さんは見つかったんでしょうか。」
小銀三は力を込めて言い、傍に下がり久美子だけが真ん中に残った。
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