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氷解
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父の抱擁を受け、少し泣いてしまった百恵だったが、恥ずかしさを隠すために、再び父をうつ伏せに寝かせてマッサージをした。
すると、誠はいびきをかき始めて寝てしまった。気持ち良さそうな顔をして。
百恵は布団をそっと掛け、その場を離れた。
そして、散らかっていた部屋のゴミを片付け、台所に溜まっていた洗い物を素早くすると、ようやく帰り支度を始めた。
誠の布団の近くに置いている小さなちゃぶ台の上に、財布から出した一万円を、書き置きの上に乗せた。
小さなメモ紙には、帰りますという事と、体に気をつけて下さいという内容を書いた。
百恵は父の頬にキスをすると、静かに部屋を出て、自宅がある川向こうに歩き出した。
時刻は深夜零時を回り、外はすっかり静まり返っていたが、百恵は父に再会出来たこと、母の話が聞けたこと、父が自分を娘だと言ってくれたことで、心は晴れやかだった。
アパートに帰ると、マキが起きて待っていてくれていた。
「お帰り、百恵」
「ただいま
起きててくれたん?」
「まあね。
アンタが心配やったさかい」
「ごめんなさい。
遅なってしもて」
「ええねん。
それでどないやってん
父娘の再会は。」
「はい。
久しぶりにお父さんと沢山話が出来て楽しかったです。」
「そうか。
アンタはホンマにアレやなあ。
あんだけの事されたのに、恨むどころかお父さん大好き娘やねんから。」
「男やなくなったからかもしれませんけど、なんか親が恋しいっていうか、なんか会いたくてしょうがなくて。
勿論、恨みとかそういう気持ちは全然ないんです。」
「まあ、アンタがそう思うんやったらそれでええけどな。」
「それと、お母さんがおる場所も教えてもろたんです。」
「えっ、そうなん?
何で親父が知ってんのよ。」
「知り合いの誰かが見たらしくて。
でも、お父さんは自分のせいで出て行ったってのをわかってはるから、自分から連れ戻しには行かんかったそうです。」
「そうなんか。
で、どこにおるんや?」
「姫路です。
姫路城の近くの食堂で働いてるらしくて。
今もおるかはわかりませんけど。」
「姫路言うたら、今度、小屋の連中が興行に行く言うてたなあ。
ええ機会や。ウチらも同行しよや。」
「行けますかねえ。」
「行ける行ける。
アンタはレディーボーイ界の頂点なら立てる存在や。
その美貌とおっぱいは誰にも負けへん。
フツーの女でもそこまでのレベルのんはおらんわ。
おるとしても芸能人くらいやろ。
日本全国どこに行っても、男はみんな買うてくれるわ。」
「もう、姉さん
ウチを買い被り過ぎですわ。」
百恵は大笑いして否定した。
すると、誠はいびきをかき始めて寝てしまった。気持ち良さそうな顔をして。
百恵は布団をそっと掛け、その場を離れた。
そして、散らかっていた部屋のゴミを片付け、台所に溜まっていた洗い物を素早くすると、ようやく帰り支度を始めた。
誠の布団の近くに置いている小さなちゃぶ台の上に、財布から出した一万円を、書き置きの上に乗せた。
小さなメモ紙には、帰りますという事と、体に気をつけて下さいという内容を書いた。
百恵は父の頬にキスをすると、静かに部屋を出て、自宅がある川向こうに歩き出した。
時刻は深夜零時を回り、外はすっかり静まり返っていたが、百恵は父に再会出来たこと、母の話が聞けたこと、父が自分を娘だと言ってくれたことで、心は晴れやかだった。
アパートに帰ると、マキが起きて待っていてくれていた。
「お帰り、百恵」
「ただいま
起きててくれたん?」
「まあね。
アンタが心配やったさかい」
「ごめんなさい。
遅なってしもて」
「ええねん。
それでどないやってん
父娘の再会は。」
「はい。
久しぶりにお父さんと沢山話が出来て楽しかったです。」
「そうか。
アンタはホンマにアレやなあ。
あんだけの事されたのに、恨むどころかお父さん大好き娘やねんから。」
「男やなくなったからかもしれませんけど、なんか親が恋しいっていうか、なんか会いたくてしょうがなくて。
勿論、恨みとかそういう気持ちは全然ないんです。」
「まあ、アンタがそう思うんやったらそれでええけどな。」
「それと、お母さんがおる場所も教えてもろたんです。」
「えっ、そうなん?
何で親父が知ってんのよ。」
「知り合いの誰かが見たらしくて。
でも、お父さんは自分のせいで出て行ったってのをわかってはるから、自分から連れ戻しには行かんかったそうです。」
「そうなんか。
で、どこにおるんや?」
「姫路です。
姫路城の近くの食堂で働いてるらしくて。
今もおるかはわかりませんけど。」
「姫路言うたら、今度、小屋の連中が興行に行く言うてたなあ。
ええ機会や。ウチらも同行しよや。」
「行けますかねえ。」
「行ける行ける。
アンタはレディーボーイ界の頂点なら立てる存在や。
その美貌とおっぱいは誰にも負けへん。
フツーの女でもそこまでのレベルのんはおらんわ。
おるとしても芸能人くらいやろ。
日本全国どこに行っても、男はみんな買うてくれるわ。」
「もう、姉さん
ウチを買い被り過ぎですわ。」
百恵は大笑いして否定した。
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