泥々の川

フロイライン

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顧問

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マキと百恵は昔話に花を咲かせていたが、向こうの方から教員らしき人間が近づいてきた事に気付き、思わず身構えた。


「どなたですか?」

三十代半ばに見えた男は、痩せ型で色黒。
ジャージ姿だった事から、おそらく体育の教師だと、マキは感じ取った。

だが、百恵の方は顔見知りなのか、少し焦った雰囲気を出していた。

「すいません。
この子の母校や言うんで、ちょっと覗かせてもろてたんです。
もう帰りますさかい、堪忍して下さい。」


派手な服装と化粧の女二人のうち、若い方がウチの元生徒?
男は俄かに信じ難い気持ちになったが、すぐ出ていくというので、それ以上は何も言わなかった。

マキは百恵に

「百恵、ほな行こか」

と、声をかけてその場から去ろうとしたが、百恵は

「松田先生、お久しぶりです。」

と、言って頭を下げた。


松田は、百恵の顔を覗き込んだ。

見たところ十代。

ということは、五年以内に卒業した者ということ。

松田は、自分が関わった生徒の顔と名前はしっかり覚えているタイプで、見覚えのない女から声をかけられたことに、少し混乱していた。


「卒業生?

顔と名前は全部覚えてる筈やったんやけど…」



「友谷です。

二年前に通わせてもろてた友谷袮留です。」

と、改めて挨拶をした。


「友谷…

えっ

友谷袮留!

キミがか!?」


「すいません。
ちょっとワケあってこんな風になってしまいましたが、友谷袮留に間違いありません。

先生、ご無沙汰してます。
その節は色々お世話になり、本当にありがとうございました。

ちゃんとお礼を言わなあかんと思てたんですけど、言えんままに家を出てしもて。」


百恵は申し訳なさそうに言った。


「いや、それは、まあ…

せやけど、先生なあ
お前が突然おらんようになったから心配になってもうて、家にも行ったんやで。

でも、お前の親父さんは病気で入院してるとか言うて、詳しいことは教えてくれへんしな。
ずっと心配しとったんやで。
まあ、元気そうでよかった。」


「先生
この子の親父がギャンブルで借金こさえて、そのカタに売り飛ばしてもうたんです。

で、しゃあなくオカマになって男娼として生計立ててるんです。

別に不義理しよう思てやったわけやないんで、堪忍したって下さい。」


「そんな事が…」

松田は呆然として、百恵を見つめた。
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