泥々の川

フロイライン

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源氏名

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「大野さん。

この子の源氏名は百恵にするから、袮留って言わんと、百恵って呼んだって。

ほら、よう見たら山口百恵そっくりやろ?」


マキが隣に座る大野に言うと

「あっ、ホンマやな。
百恵ちゃんにそっくりや。言われてみるまで気付かんかったわ。

こりゃ人気が出るぞ。マキもウカウカしてられんぞ。」


大野は上機嫌で、布団の中の袮留に言った。


「頑張って借金返せるように働きますんで、よろしくお願いします。」

袮留はそう言ったが、大野は首を横に振った。


「袮留、お前はそんなん気にせんでええ。

たしかに借金のカタにお前の身請けをしたが、親父は親父、お前はお前や。

そら、お前が稼いだ金の何割かはワシも取るけどな、全部を巻き上げたりはせえへん。
少なくとも半分はお前のもんや。

ここで稼いで将来自分の力だけでで生きていけるようにしたらええ。」


「ありがとうございます。」


「大野さん、だからあ、この子は袮留ちゃうよ。
今日から百恵や。

百恵も、わかった?」


「はい。わかりました。

慣れへんけど、慣れるように頑張ります。」


百恵はそう言って笑った。


しかし、今の今まで普通の男子中学生だった自分が男とそういう行為をすることが出来るのだろうか?

百恵はどう考えてもそれを想像する事が出来なかった。


しかし、そんな百恵の思いとは裏腹に、時だけは律儀に過ぎていき、手術の傷も安定し、痛みも腫れも引いた。

執刀した竹本も、経過は順調とし、女性ホルモンの投与を開始した。
この女性ホルモンの注射は、これから一生続くことになる。

約束通り、髪型もマキによって山口百恵そっくりにしてもらい、化粧のレクチャーも受けた。

そして、大野に金を出してもらい、商店街で女性物の下着や、服などを複数購入したのだった。

だが、大野は百恵を慌てず丁寧に育てていくつもりだったので、すぐに客を取らせたりはせず、しばらくのうちは雑用をやらせて日々を過ごさせたのだった。


百恵もいつまでもタダ飯食らいはできないと、言葉遣い、女性らしい仕草などを学び、三ヶ月が経過した。

女性ホルモンの効果も徐々に出始め、胸も薄らであるが膨らみを持ち、体型もほどよく皮下脂肪が付いてきた。
乳首や乳輪については効果が顕著で、飛躍的に大きく育った。

それを見たマキは、大野に報告したのだが、いよいよ客の相手をする日が近いと百恵も感じるのだった。
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