聖也と千尋の深い事情

フロイライン

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千尋は俺のアルバムを広げて、赤ん坊の頃からの写真を次々に見ていった。

「うわあっ、聖也の赤ちゃんのときってめっちゃ可愛い!」


「あ、そうやろ?

その頃はみんなから可愛いって言われててんて。
今はキショいけど」


「キショないで。

聖也かっこええやん」

自虐かます俺に、千尋は真顔で俺を見て言った。

「かっこええわけないやん」

俺は冷静に返した。


「自分ではわからへんもんやで、そんなんは。」


「俺も千尋みたいな顔してたら、もっと違う人生を遅れたんとちゃうかなあ。」


「僕の顔?

なんで?」


「だって千尋ってめちゃ美形やん。
女子にも見えるし

そういう顔って今どきのモテ顔やで」


「そうなん?

自分では何も思えへん」


「いつも女子にキャーキャー言われてるやんか」


「えー、そんなことないで。

聖也は好きな女子とかおんの?」



「おらんおらん!

そんなん考えるだけ無駄やわ
そう言う千尋はどうやねん?」


「僕?

好きな女子っていうのはおれへんけど…」


千尋はそう言って、続けて何かを言おうとしたけど、やめてしまった。


「非モテの俺としては、生身の女子には関心を持たないようにしてんねん」


「あー、だからこんなポスター貼ってんのか」

千尋は壁に貼られたアニメのヒロインのポスターを見て笑って言った。

「千尋は見てへんの、コレ」


「あー、僕は見えへんなあ。
そういうの」


「千尋って、ゲームもあんまりしないし、アニメも見ない

何か俺とは違う世界に生きてるみたいやわ。」


「そんな事ないよ。

たまたまやん。他は何も変わらへんで。」


俺は千尋の事について段々興味が芽生えてきた。
自分とは全く違う価値観を持ってて、そして、外見も内面もカンペキ。
なのに、俺みたいなパッとしない人間と仲良くしてくれる。
八方美人な奴なのかって思ったけど、ここまで深入りされて仲良くしてもらってるのは、俺だけと見て間違いないと思う。

千尋に色々質問してみたくなった。

「千尋ってゲームもアニメもそうでもないんやったら、何が一番好きなん?」


「僕?

えっと、料理とか」


「料理!!
作るん?」


「うん。

レシピのアプリとかYouTubeとかを見ながらやで。」


うーん

ますます関心が出てきた。


「しょーもないねんけど、自分がええと思ったものを集めることかなあ。

文具とか、雑貨みたいなの」


「へえ」

「変やろ?」


「変やないけど、それやったら、部屋にそういうの飾ったりしてんの?」

「うん。してる」


「見てみたくなったわ。
今度、千尋の家に行っていい?」

「ええよ、そんなん
大歓迎するわ

来て来て」

千尋は伝家の宝刀である屈託のない笑顔で俺に言った。
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