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何も残らない
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「珀クン
田舎に帰って、何をするの?」
久美子が質問をすると、珀は答えに窮した。
高校を中退し、東京に出ると決めた日から、何があっても帰ってこないと誓っていた。
それは、レスラーになるため、不退転の決意を改めてした事は勿論、性同一性障害という誰にも知られていない、自身の悩みを抱えたまま地元に帰ってきた時、次はバレてしまうのではないかと考えていたからだった。
もし、レスラーがダメなら、誰も知り合いがいない東京で、カミングアウトする事なくニューハーフになるのもいいという考えが、ほんの少しだけ、頭をよぎっていたのだった。
だが、実際にレスラーになる夢が断たれてみると、未練が消えず、ニューハーフとして生きる勇気もなく…と、いう中途半端な思いに駆られていた。
それ故に久美子の質問に、何も答えられず、ただ沈黙する珀だったが…
「あの、友谷社長…
ミカさん…」
「ん、どうしたの?」
「すいません。
もう一度道場にお邪魔して、見学させていただいてもよろしいですか?」
「そんなの、勿論じゃない。
いつでも来て。」
久美子がそう言うと、ミカも笑顔で頷いた。
「いつ来る?
ウチらはいつでもいいわよ。今からでも。」
「あの、今日はまだバイトなので、よろしければ明日にでも。」
「明日は合同練習で全員朝から来てるから、何時でもいいわよ。」
「ありがとうございます。」
珀は、二人に深々と頭を下げた。
こうしてまた、ニューハーフプロレスを見学する事になった珀だったが、最初に行った時のように偏見に満ちた目ではなく、フラットな気持ちで見学したいと心から思うのだった。
田舎に帰って、何をするの?」
久美子が質問をすると、珀は答えに窮した。
高校を中退し、東京に出ると決めた日から、何があっても帰ってこないと誓っていた。
それは、レスラーになるため、不退転の決意を改めてした事は勿論、性同一性障害という誰にも知られていない、自身の悩みを抱えたまま地元に帰ってきた時、次はバレてしまうのではないかと考えていたからだった。
もし、レスラーがダメなら、誰も知り合いがいない東京で、カミングアウトする事なくニューハーフになるのもいいという考えが、ほんの少しだけ、頭をよぎっていたのだった。
だが、実際にレスラーになる夢が断たれてみると、未練が消えず、ニューハーフとして生きる勇気もなく…と、いう中途半端な思いに駆られていた。
それ故に久美子の質問に、何も答えられず、ただ沈黙する珀だったが…
「あの、友谷社長…
ミカさん…」
「ん、どうしたの?」
「すいません。
もう一度道場にお邪魔して、見学させていただいてもよろしいですか?」
「そんなの、勿論じゃない。
いつでも来て。」
久美子がそう言うと、ミカも笑顔で頷いた。
「いつ来る?
ウチらはいつでもいいわよ。今からでも。」
「あの、今日はまだバイトなので、よろしければ明日にでも。」
「明日は合同練習で全員朝から来てるから、何時でもいいわよ。」
「ありがとうございます。」
珀は、二人に深々と頭を下げた。
こうしてまた、ニューハーフプロレスを見学する事になった珀だったが、最初に行った時のように偏見に満ちた目ではなく、フラットな気持ちで見学したいと心から思うのだった。
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