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智とユウの悲願であった、ニューハーフ高級クラブのオープンが間近に迫り、あとは開店を迎えるだけの状況になりつつあった。
今日も昼間から、二人に加え、久美子とキャストの五名が店に集合して、ミーティングを重ねていた。
そして、もう一つ重要なポスト
そう、男性スタッフについて、ようやく決定したと、智の口から皆への説明と、その人物の紹介があった。
「皆さんにご紹介します。
有澤さんです。
有澤さんは、ワタシが以前に働かせてもらってたヘルスの店長をされてて、この度、ご縁があってウチに来ていただくことになりました。」
「有澤です。
トモちゃん…あ、いや、吉岡さんからご紹介いただきましたように、前に一緒に働いていたことがあります。
その店が、少し前に閉店してしまって、路頭に迷いそうになっていたところを、偶然吉岡さんと再会して、お声をかけていただきました。
こういう仕事は、若い頃に少しかじったことがありますが、皆さんにご迷惑をおかけしないように頑張りたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。」
有澤は、少し緊張気味に挨拶をした。
「トモさんて風俗にいたのか。
知らんかった」
何でも思った事を口にしてしまうルイは、みんなに聞こえるような独り言を口にしてしまい、智の笑いを誘った。
「そうなの。
ニューハーフになってから、風俗、AV、農家、バー経営など、色々やらせてもらいました。」
「はい、それじゃあ三日後のプレオープンに向けて、ロープレを行うわよ。」
久美子が声をかけると、五人共が元気に返事をして立ち上がった。
キャストの教育は、久美子の厚意に甘え、智とユウは、仕入れや店の備品など、業者との対応に専念していた。
智は、有澤に近づいていき、あらためて礼を言った。
「有澤さん、急なお願いを聞いていただいて、本当にありがとうございます。
ワタシは裏方に徹しようとは思ってたんですけど、さすがにニューハーフだけで回すのは無理だなって思っていたので。」
「いやいや、こちらの方こそ、渡りに船っていうか…
店が潰れちゃってさあ、俺もこんな歳じゃない?
これからどうしようかって、真剣悩んでたとこだったんだよ。」
「お店が潰れたなんて、ワタシ…
聞いてビックリしちゃって…」
「いやいや、遅かれ早かれそうなる運命だったんだよ。
だって、トモちゃんを超える人気嬢ってのも出てこなかったし、キャストも高齢化して、大手に客を奪われる一方だったしね。」
「アキさんは、どうされてます?」
「あー、アイツは田舎に帰ったよ。」
「えっ?」
「他の連中は他店に移籍したり、働き先が見つかったんだけど、アキは年食ってたし、ウチにいた時から客が付いてなかったからな。
潮時だと思ったんじゃないかな。」
若い頃から世話になった人々が去っていく現実に、智は時の流れを感じずにはいられなかった。
今日も昼間から、二人に加え、久美子とキャストの五名が店に集合して、ミーティングを重ねていた。
そして、もう一つ重要なポスト
そう、男性スタッフについて、ようやく決定したと、智の口から皆への説明と、その人物の紹介があった。
「皆さんにご紹介します。
有澤さんです。
有澤さんは、ワタシが以前に働かせてもらってたヘルスの店長をされてて、この度、ご縁があってウチに来ていただくことになりました。」
「有澤です。
トモちゃん…あ、いや、吉岡さんからご紹介いただきましたように、前に一緒に働いていたことがあります。
その店が、少し前に閉店してしまって、路頭に迷いそうになっていたところを、偶然吉岡さんと再会して、お声をかけていただきました。
こういう仕事は、若い頃に少しかじったことがありますが、皆さんにご迷惑をおかけしないように頑張りたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。」
有澤は、少し緊張気味に挨拶をした。
「トモさんて風俗にいたのか。
知らんかった」
何でも思った事を口にしてしまうルイは、みんなに聞こえるような独り言を口にしてしまい、智の笑いを誘った。
「そうなの。
ニューハーフになってから、風俗、AV、農家、バー経営など、色々やらせてもらいました。」
「はい、それじゃあ三日後のプレオープンに向けて、ロープレを行うわよ。」
久美子が声をかけると、五人共が元気に返事をして立ち上がった。
キャストの教育は、久美子の厚意に甘え、智とユウは、仕入れや店の備品など、業者との対応に専念していた。
智は、有澤に近づいていき、あらためて礼を言った。
「有澤さん、急なお願いを聞いていただいて、本当にありがとうございます。
ワタシは裏方に徹しようとは思ってたんですけど、さすがにニューハーフだけで回すのは無理だなって思っていたので。」
「いやいや、こちらの方こそ、渡りに船っていうか…
店が潰れちゃってさあ、俺もこんな歳じゃない?
これからどうしようかって、真剣悩んでたとこだったんだよ。」
「お店が潰れたなんて、ワタシ…
聞いてビックリしちゃって…」
「いやいや、遅かれ早かれそうなる運命だったんだよ。
だって、トモちゃんを超える人気嬢ってのも出てこなかったし、キャストも高齢化して、大手に客を奪われる一方だったしね。」
「アキさんは、どうされてます?」
「あー、アイツは田舎に帰ったよ。」
「えっ?」
「他の連中は他店に移籍したり、働き先が見つかったんだけど、アキは年食ってたし、ウチにいた時から客が付いてなかったからな。
潮時だと思ったんじゃないかな。」
若い頃から世話になった人々が去っていく現実に、智は時の流れを感じずにはいられなかった。
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