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春
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春になり、智を取り巻く環境も劇的に変わった。
一人娘の莉愛は、智や亡くなった母と同じT大に見事合格し、偉業を達成した。
新店のオープンも直前に迫り、久美子のところで面接をした五名と共に開店に向けての準備にも余念がなかった。
智もユウもバーの仕事をしながらなのでかなりタイトな日々を送っていたが、そこにメグの姿はなかった。
AVで人気が出たメグは、活動の幅を広げ、YouTubeなどにも出演、知名度も上がり、他の媒体からのオファーも入るようになってきていた。
媒体へのこれ以上の露出を躊躇うメグに、智とユウは背中を押した。
そして、二人がかつて所属していたタレント事務所にメグを紹介し、今月からそこの所属タレントとして一歩を踏み出す事にしたのだった。
智の姉、美智香も子育てをしながら再びダイエットに励み、成果を上げていった。
相変わらず夫の真弥は優しいとの事。
元夫の敦は、この春から教師に復帰し、地元の分校で教鞭を取るようになった。
妻の由香里と愛娘との生活も充実しているらしく、新居で幸せに暮らしている。
智も今年四十二歳となる。
二十三歳のときにニューハーフに転身してから、約二十年が経ち、人生の半分近くを女として生きてきた事になるのだ。
エリート商社マンだった事や、男として暮らしていた日々の心象もすっかり無くなり、もはや名残すらも見出す事が出来なくなった。
智の今の目標は、オープン間近のこの店を軌道に乗せること。
これ以外は何も考えていなかった。
その日も朝早く起きて久美子の家に向かう智だったが、裏方に回ろうとする彼女にとって、久美子からのアドバイスはまさに金言で、一言一句逃すまいと、メモを取り熱心に話を聞き入った。
久美子自体は還暦を迎えるにあたり、経営していた店全てを手放したり、貸したりして身軽になっていた。
「ワタシは三十過ぎで水商売を始めて、三十年近くになるけど、なんだかんだ言って難しい商売だってつくづく思うわ。」
「そうですね。
ワタシもあんなに小さなバーなのに、いつまで経っても手探り状態で、どういう風にするのが一番いいのかがわからないです。」
「そこまで心配しなくてもいいわよ。
それにしても、トモちゃん。
あなたお店に出ないってホントなの?」
「はい。
太った中年オカマですし、裏方に徹する方がいいかなって。
もちろん、バーの方はこれからもお客さんの相手を務めさせていただきますけど。」
「うーん…
あなた、これだけ美しいのにもったいないわね」
久美子は、智の決断を心から残念がった。
一人娘の莉愛は、智や亡くなった母と同じT大に見事合格し、偉業を達成した。
新店のオープンも直前に迫り、久美子のところで面接をした五名と共に開店に向けての準備にも余念がなかった。
智もユウもバーの仕事をしながらなのでかなりタイトな日々を送っていたが、そこにメグの姿はなかった。
AVで人気が出たメグは、活動の幅を広げ、YouTubeなどにも出演、知名度も上がり、他の媒体からのオファーも入るようになってきていた。
媒体へのこれ以上の露出を躊躇うメグに、智とユウは背中を押した。
そして、二人がかつて所属していたタレント事務所にメグを紹介し、今月からそこの所属タレントとして一歩を踏み出す事にしたのだった。
智の姉、美智香も子育てをしながら再びダイエットに励み、成果を上げていった。
相変わらず夫の真弥は優しいとの事。
元夫の敦は、この春から教師に復帰し、地元の分校で教鞭を取るようになった。
妻の由香里と愛娘との生活も充実しているらしく、新居で幸せに暮らしている。
智も今年四十二歳となる。
二十三歳のときにニューハーフに転身してから、約二十年が経ち、人生の半分近くを女として生きてきた事になるのだ。
エリート商社マンだった事や、男として暮らしていた日々の心象もすっかり無くなり、もはや名残すらも見出す事が出来なくなった。
智の今の目標は、オープン間近のこの店を軌道に乗せること。
これ以外は何も考えていなかった。
その日も朝早く起きて久美子の家に向かう智だったが、裏方に回ろうとする彼女にとって、久美子からのアドバイスはまさに金言で、一言一句逃すまいと、メモを取り熱心に話を聞き入った。
久美子自体は還暦を迎えるにあたり、経営していた店全てを手放したり、貸したりして身軽になっていた。
「ワタシは三十過ぎで水商売を始めて、三十年近くになるけど、なんだかんだ言って難しい商売だってつくづく思うわ。」
「そうですね。
ワタシもあんなに小さなバーなのに、いつまで経っても手探り状態で、どういう風にするのが一番いいのかがわからないです。」
「そこまで心配しなくてもいいわよ。
それにしても、トモちゃん。
あなたお店に出ないってホントなの?」
「はい。
太った中年オカマですし、裏方に徹する方がいいかなって。
もちろん、バーの方はこれからもお客さんの相手を務めさせていただきますけど。」
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あなた、これだけ美しいのにもったいないわね」
久美子は、智の決断を心から残念がった。
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