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幸せ論

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その日も、メグには母とゆっくりすごして欲しいと考えた智の配慮により、メグは由香里と恵香と一緒に家ですごす事となった。

智とユウが車で出かけて行くと、部屋の中には血の繋がった三人だけが残る形になった。

メグは恵香の様子を見たり、由香里の手伝いをしたり忙しく動いた。

洗い物も手伝おうと、流し台の前に立つ由香里の隣に来て、洗った皿を拭いては置いていった。


「ねえ、ママ」


「ん?

何?恵ちゃん」



「ママ、すごく幸せそうね。」


「うん。
おかげさまで、すごく幸せよ。」


「堂々と言えるところがスゴイわね。」


「だって幸せなのは事実だし。」


「良い旦那さんと巡り逢えてよかったね。」


「うん。最高の旦那さんでパパだと思うわ。
惚気なしでね。」


「そうだね。それはワタシも思う。
特に前のパパとの関係を見てきたから。」


「もう、その話はナシよ。」


「ごめんなさい。
でも、最近ふと思うの。
ママはなんで前のパパと結婚したんだろうって。
全然お似合いのカップルじゃなかったよ。
その子供が言うのもアレだけど。」


「そうだね…」


由香里は、思い出していた。
一度目の結婚生活の事を…

もう二十年近く前の話になる





「えっ、海外転勤?」


由香里は境隆之に呼び出されたレストランで、そう言われ、驚きの表情を見せた。


「だから、そこで言ったよ。
実は同僚の君原さんとお付き合いしていて、結婚するつもりだって。」


「えっ、言ったんだ」


「ああ、言ったよ」


「でも、隆ちゃん…」


「由香里の実家への挨拶もしてないのにって言うんだろ?

行くよ。

仕事が忙しいってのに託けて、先延ばしにしてたもんな。」


「うん。
私も母には話してるし…

多分、父も反対しないとは思うけど。


あと、お仕事の方も…」


「結婚しても続けたいって話か。

由香里がそうしたいならいいんじゃないか。」


「ありがとう。

会社に入ってまだ一年だし、ようやく最近お仕事が楽しくなり始めたの。」


「そうだな。
キミのような優秀な人材を家庭に入れてしまうのは、僕にとっても本意じゃないしな。

何よりもウチの部署の連中に恨まれるよ。」

一流大学を優秀な成績で卒業し、入社後も他の新人とは一線を画す活躍を見せる由香里に、隆之は勿論、社内の人間も皆、相当上まで行く人材だと期待の目を持って見ていた。

だが、運命とは皮肉なもので、それから間もなくして由香里の妊娠が発覚。

いわゆる出来ちゃった結婚になり、全ての段取りが狂ってしまった。

由香里の両親への挨拶もその後となり、結婚式は転勤の事もあって中止

思えば、恵太を身籠ったこの時点から、由香里の人生の歯車に狂いが生じ始めていたのだった。
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