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乱杭

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ここに留まる事を許された翼は、ユウや智、メグに対し、熱い想いを語り続け、三人を感心させた。
智に至っては、そんな翼を可愛いとさえ思い始め、段々とその魅力にハマっていった。


しかし、啓斗はすっかり呆れ果て、早く翼を帰らせようと不機嫌にその背中を突っついた。

「おい、早く帰れよ、マジで」


「いや、トモちゃんが居ていいって言ったし。」


「いやいや、もう夜だし
お前仕事が残ってんだろ?」


「今日はマジで大丈夫なんだよ。」

噛み合わない話をする二人と、智、ユウ、めぐの元に、裕美がキッチンから顔を出し、声をかけた。

「優ちゃん」


「ん?

どうしたの、お母さん」


「あの、よくよく考えたらお布団が一つ足りないの。
ウッカリしてたわ。

今から買ってくるわ」


「いいよいいよ、お母さん。

ワタシ、トモちゃんと一緒の布団で寝るし、それだったら大丈夫でしょ?」


「まあ、そうだけど…

せっかく来ていただいたのに、そんな窮屈な思いをさせるのは…」


「あの、お母さま

ワタシは全然大丈夫ですので。
お気遣いなさらないように。

突然お邪魔したんですから…

本当に申し訳ありません。」


智はそう言って頭を下げた。


そんな中、黙って聞いていた翼は

「あのう…」

と、会話におそるおそる入ってきた。


「どうしたの?」


ユウが視線を向けると、翼は

「お三人さん、良かったらウチに来ませんか」

と、言った。


「翼君の?」


「はい。

ウチ、旅館ですし、今日は一件も予約が入ってないので、部屋も丸々空いてますし、よかったら…」


「翼君の家って、旅館を経営してるの?」

智がビックリして聞くと、翼は深く頷いた。


「この辺て、一応温泉が出るんですよ。

完全な観光地ではないけど、ウチみたいな旅館が何軒かあって…」


「へえ」


「是非、来てください。
お代は頂戴しませんので」

翼はそう言って、三人に来るよう懇願した。


「ちゃんとお金は払うわよ、もちろん

ねえ、ユウちゃん

せっかくそう言ってくれてるんだから、行く?」


智が言うと


「そうだね

せっかくだし、翼君の厚意に甘えよっか」


ユウも同調した。


「ありがとうございます!

じゃあ、早速行きましょうか。」


憧れの人ユウ、そして智とメグが実家にやって来ることになり、当然のことながら、やたらとテンションが高くなる翼であった。

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