カジュアルセックスチェンジ

イイワケ

「お姉ちゃんさあ、いくら真弥君が太ってるのがいいって言っても、100キロはないんじゃない？」

美智香の家にやってきた智は、会う度にぶくぶくと太り続けていく姉の姿に、頭を抱えた。

「それはそうなんだけど

真弥くんにどれくらいの体になればいい？って聞いたら、100キロくらいかなあって。」


「でも、短期間でよくそこまで太れたものね」


「元々ダイエットしても全然成果が出てなかったし…
普通にしてればすぐに太るのわかってたしね。

でも、100キロともなると、とにかく暴飲暴食をしたり、不摂生にしないとダメだったし

結構ムリもしたよ。」


「太り過ぎたせいか、声もこもった感じになるのね。」


「うん。そうね…」


「で、いつからダイエット再開するの？」


「気持ちもだいぶ楽になったし、もう悩まないと思うし…

実は今日からダイエットを始めてるのよ。」


「えっ、そうなんだ

でも、お姉ちゃん

その年齢でのダイエットはめちゃくちゃキツイと思うよ。」


「そうだね…
精神的におかしくなってたとはいえ、これは自分でもやりすぎたなって思うわ。

太るのに意地になって、逆に頑張っちゃった。
おかげで体のあちこちがガタガタよ。

でも、頑張るよ
智弥のためにも長生きしないとね。」


「でも、お姉ちゃん真面目だし努力家だし、メンタルが戻ったんだったら、もう大丈夫よ。
頑張ってね。」


「うん、ありがとう。

それにしても智…

アンタ痩せたわねえ」


「明日からAVの撮影がスタートするのよ。

全部で10本撮る契約だからね。」


「10本も！

なんで、またそんなに…」


「今経営してるバーの隣の物件をどうしても手に入れたくてね。

そのためにはまとまったお金が必要なのよ。」


「えっ、いくらなの？

必要なら私、貸してあげるわよ。」


「大丈夫。

そういうことは自分で稼いだお金じゃないとダメだと思うしね。」


「それもそうね」


「ユウちゃんも恵ちゃんもめっちゃやる気になってて、ワタシはそれについて行くだけみたいな感じだよ。」


「へえ、そうなの」


「ワタシの人生ももうそんなには長くもないと思うし、お店の経営に全てを賭けてみたいのよ。」


「まだまだじゃない。
智はもう女性なんだから、日本人女性の平均寿命に当てはめてみると、まだ半分も来てないよ。」


「お姉ちゃん
ワタシはニューハーフだよ。

女らしいカラダを手に入れるために、健康を害するような事ばかりして、今まで生きてきたの。

ワタシらの寿命って実際長くはないのよ。」


「そうなの…

でも、個人差があるし…

そんな事言わないでよ」


「出来る限りしぶとく生きてみせるわ」


心配する美智香に、智は笑みを見せながらも、力強く答えた。