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産後鬱

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翌日、智は美智香の自宅を訪れていた。


「智弥~っ」

智は甥っ子の名前を呼んで、その可愛さに感動した。


「お姉ちゃんにも似てるし、目元は真弥クン似でもあるよねー」


「そう?
私にはそんなに似てないと思うけど。
でも、真弥君に似て、イケメンでホントによかったわ」


美智香もまた、我が子の顔を覗き込みながら笑って言った。


「子供が出来ても、真弥クンにメロメロなんだね、お姉ちゃん。」


「当たり前よ。

そんな事で気持ちが変わるわけないわ。」


「へえ、そうなんだ。

だいたいの夫婦は、そうじゃないらしいけどね。」


「ウチは大丈夫よ。

真弥クンは、智弥には勿論そうだけど、私にもちゃんと愛情を注いでくれるもの。
それがわかるもの。」


「お姉ちゃんが幸せそうでよかったわ。
産後の状況があまり良くないって聞いてたから、心配してたのよ。」


「体調はたしかに良くないわ。

貧血とかお腹が痛かったりもするけど、耐えられないほどじゃないから大丈夫よ」


「さすがに強いわね、お姉ちゃん」


「まあ、あの男からこの生活を守らなきゃって、あのときに強く思って、そして心に誓ったからね。」


美智香は、達也と桐山による悪質な事件を思い出しながら、強い口調で智に言った。

「そうだね…」


「あ、智

裁判に出て証言してくれたんだね。」


「えっ」


「真弥君から聞いたわ。」


「あ、そうなんだ。

お姉ちゃんは妊娠してるし、一番大事な時だから知らせないでおこうって…

でも、アイツらを一日でも長く刑務所に入れたいから…その一心でね。」


「ありがとう、智」


「でも、桐山はともかく、達也は前科もなく初犯だったし、仕事で大手量販との契約を失い、追い詰められた事により衝動的に行なったものだって、向こうの弁護士が主張して…

思ってたより、罪が軽かったの。
主犯でもなかったし…」


「そうだね。
でも、私はもう心配はしてないのよ。

あの男は甘やかされて育ってきたし、これからの人生で、逆境に耐えていけるようなタマじゃないわ。

刑期を終えて出てきても、多分何かする気力は残ってないと思う。
再起することも、また私に嫌がらせをする事もね。」


「だと、いいんだけど…」


「それより、智の方はどうなの?
お店の方は上手くいってるの?」


「うん。おかげさまで。
いつも満員で、ある程度軌道に乗った感はある。

前の旦那さんの再婚相手の由香里さんて人がいるんだけど
由香里さんの連れ子の恵ちゃんて子を、今ウチに住ませて一緒に働いてもらってるの。」


「えっ、何それ」


「色々あってね。
その恵ちゃんて子もニューハーフ志望で、ワタシを頼って東京に出てきたのよ。」


智は、そう言って笑った。
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