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天賦の才

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恵太のデビュー戦はあまりにも見事というしかなく、これが天職とも思えたくらいだった。


「恵ちゃん、お疲れ様」



最後の客を送り出した後、店に戻って来たユウが恵太の働きを労った。


「ユウさん
お疲れ様です。」


「どうだった?
バーの仕事は」


「もう、最高でした!

こんなに楽しいお仕事があるのかってくらい」


「恵ちゃんてトークスキルが高いよね。
結構年配のおじさんともめちゃくちゃ盛り上がってたし」


片付けをしながら、智も恵太の頑張りを褒めた。


「トモちゃん、ホントにありがとう。
すごく楽しかったわ。

ワタシの求めていたものが全てここにあるって、心の底からそう思うわ。」


「恵ちゃん、大げさね

でも、せっかく東京に出てきたんだから、人生を楽しまなくちゃね。
これまで辛い思いをいっぱいしてきたんだから。」

智は恵太に優しげな口調で言うと、そっと肩に手を置いた。


「トモちゃん、ありがとう

ワタシ、ここで働きたい」


「それは別に構わないけど…ねえ、ユウちゃん」


「うん。
恵ちゃんが来てくれたら、お客さんがさらに増えると思うよ。

でも、他の世界も覗いてみてからにした方がいいかも。

もっと自分に合ったお仕事が見つかるかもしれないしね。」


「そうですね。

ユウさん、ありがとうございます。」


「とりあえずワタシが紹介する男の娘メイドカフェは、面接受けてみて判断したらいいと思うよ。
合う合わないって絶対にあるしね。」


「はい。」


「さて、そろそろ帰ろうか。

ねえ、恵ちゃん
ご飯食べて帰るけど、何か食べたいものある?」


「えーっ
ワタシは別に何でもいいよ。
トモちゃんかユウさんが食べたいもので。」


「子供が遠慮するもんじゃないの。」

ユウに窘められた恵太は、しばらく考えていたが…


「それじゃあ…

えっと、オムライス…」

と、言った。


「オムライスっ!」

深夜にオムライスを食べさせる店はなかなか存在しないと、智とユウは顔を見合わせたが

「トモちゃん、ファミレスならあるんじゃない?」

と、ユウが告げると、智も

「そうだね、そうしよう」

と、言って手を叩いた。


「ごめんなさい。
変な食べ物選んで…」

恵太は恐縮したが、智は

「フフッ
恵ちゃん、ちょっと見ない間にめちゃくちゃ美人になって大人の女性になったって思ってたけど、中身はまだまだ子供なところがあって、少し安心したわ。」

と、言って笑った。

恵太は顔を赤らめたが、この何気ない会話、空間、その全てが心地よく、自分の生きる場所はここだ!
と強く思った。
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