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長い夜

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出産まで、相当な時間がかかる事を知らされた智と真奈美は、病院を後にし、智は美智香と真弥の家に、真奈美は自宅に戻った。




その頃、美智香は予想以上にキツイ陣痛に苦しんでおり、真弥の前で取り乱して悲鳴を上げた。

「痛いっ!

ちがう!そこじゃないっ!早くして!」 


真弥も美智香に取り付けられた測定器の数値が上がり、一定のラインを超えると、美智香の腰の部分を摩っていたが、気休めにもならず…




既に日付も変わってしまったが、同じことの繰り返しが延々と行われている。


流石に真弥も、いつ生まれてくるんだ…と、思いながら側に寄り添い、徹夜も覚悟していた、その時、担当医の上柳が現れた。


そして、美智香の様子を見た後、真弥に向かって

「少し赤ちゃんの心音が弱まってきてます。
自然分娩を諦めて、帝王切開に切り替えようと思うのですが。」

と、言った。


「心音が…」


「いえ、そんなに深刻なものではありません。

念には念をという事です。」


上柳は美智香にも言ったが、痛みに耐えられない美智香は、眉間に皺を寄せ、苦悶の表情を浮かべながら、何度も頷いた。


こうして、美智香は運ばれていき、真弥は期せずしてこの終わりのない状況を脱することが出来たのだった。

ドッと疲れが出た真弥は、壁に寄りかかり、天を見上げた。




そして…どれくらい待っただろうか…




一人で待つ真弥の元に、無事出産を終えたという知らせが届いた。


元気な男の子で、体重は2850gだった。


年配の看護士の女性が、真弥を呼び出し、生まれたばかりの我が子と対面させたが

「もう、この子
心音が弱まってるって言ってたけど、生まれてきたら全然元気なのよ。
ホント、演技派ね」

と、言って笑った。

真弥はその場で抱かせてもらい、その手に重いとも軽いとも言えないくらいの重みを感じた。

夢にまで見た美智香との間に出来た子を見つめながら、真弥は感激して落涙してしまったが、このような場面を何度も見てきている看護士は、真弥から赤ちゃんを受け取ると

「お父さん、今日はこれで一旦お家に帰って下さい。

また明日、赤ちゃんとママさんに会いにきてあげて。
今日はゆっくり寝て下さい。」

と、淡々とした口調で言った。


「わかりました。

色々ありがとうございます」

真弥はぺこりと頭を下げた。



その後、真弥は一階に降り、受付から

「正面玄関はもう閉まっていますので、こちらから出て下さい」

と、言われて通用口を案内された。


疲労と安堵と希望に包まれながら、真弥は自宅に向かって歩き出したのだった。
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