510 / 666
長い夜
しおりを挟む
出産まで、相当な時間がかかる事を知らされた智と真奈美は、病院を後にし、智は美智香と真弥の家に、真奈美は自宅に戻った。
その頃、美智香は予想以上にキツイ陣痛に苦しんでおり、真弥の前で取り乱して悲鳴を上げた。
「痛いっ!
ちがう!そこじゃないっ!早くして!」
真弥も美智香に取り付けられた測定器の数値が上がり、一定のラインを超えると、美智香の腰の部分を摩っていたが、気休めにもならず…
既に日付も変わってしまったが、同じことの繰り返しが延々と行われている。
流石に真弥も、いつ生まれてくるんだ…と、思いながら側に寄り添い、徹夜も覚悟していた、その時、担当医の上柳が現れた。
そして、美智香の様子を見た後、真弥に向かって
「少し赤ちゃんの心音が弱まってきてます。
自然分娩を諦めて、帝王切開に切り替えようと思うのですが。」
と、言った。
「心音が…」
「いえ、そんなに深刻なものではありません。
念には念をという事です。」
上柳は美智香にも言ったが、痛みに耐えられない美智香は、眉間に皺を寄せ、苦悶の表情を浮かべながら、何度も頷いた。
こうして、美智香は運ばれていき、真弥は期せずしてこの終わりのない状況を脱することが出来たのだった。
ドッと疲れが出た真弥は、壁に寄りかかり、天を見上げた。
そして…どれくらい待っただろうか…
一人で待つ真弥の元に、無事出産を終えたという知らせが届いた。
元気な男の子で、体重は2850gだった。
年配の看護士の女性が、真弥を呼び出し、生まれたばかりの我が子と対面させたが
「もう、この子
心音が弱まってるって言ってたけど、生まれてきたら全然元気なのよ。
ホント、演技派ね」
と、言って笑った。
真弥はその場で抱かせてもらい、その手に重いとも軽いとも言えないくらいの重みを感じた。
夢にまで見た美智香との間に出来た子を見つめながら、真弥は感激して落涙してしまったが、このような場面を何度も見てきている看護士は、真弥から赤ちゃんを受け取ると
「お父さん、今日はこれで一旦お家に帰って下さい。
また明日、赤ちゃんとママさんに会いにきてあげて。
今日はゆっくり寝て下さい。」
と、淡々とした口調で言った。
「わかりました。
色々ありがとうございます」
真弥はぺこりと頭を下げた。
その後、真弥は一階に降り、受付から
「正面玄関はもう閉まっていますので、こちらから出て下さい」
と、言われて通用口を案内された。
疲労と安堵と希望に包まれながら、真弥は自宅に向かって歩き出したのだった。
その頃、美智香は予想以上にキツイ陣痛に苦しんでおり、真弥の前で取り乱して悲鳴を上げた。
「痛いっ!
ちがう!そこじゃないっ!早くして!」
真弥も美智香に取り付けられた測定器の数値が上がり、一定のラインを超えると、美智香の腰の部分を摩っていたが、気休めにもならず…
既に日付も変わってしまったが、同じことの繰り返しが延々と行われている。
流石に真弥も、いつ生まれてくるんだ…と、思いながら側に寄り添い、徹夜も覚悟していた、その時、担当医の上柳が現れた。
そして、美智香の様子を見た後、真弥に向かって
「少し赤ちゃんの心音が弱まってきてます。
自然分娩を諦めて、帝王切開に切り替えようと思うのですが。」
と、言った。
「心音が…」
「いえ、そんなに深刻なものではありません。
念には念をという事です。」
上柳は美智香にも言ったが、痛みに耐えられない美智香は、眉間に皺を寄せ、苦悶の表情を浮かべながら、何度も頷いた。
こうして、美智香は運ばれていき、真弥は期せずしてこの終わりのない状況を脱することが出来たのだった。
ドッと疲れが出た真弥は、壁に寄りかかり、天を見上げた。
そして…どれくらい待っただろうか…
一人で待つ真弥の元に、無事出産を終えたという知らせが届いた。
元気な男の子で、体重は2850gだった。
年配の看護士の女性が、真弥を呼び出し、生まれたばかりの我が子と対面させたが
「もう、この子
心音が弱まってるって言ってたけど、生まれてきたら全然元気なのよ。
ホント、演技派ね」
と、言って笑った。
真弥はその場で抱かせてもらい、その手に重いとも軽いとも言えないくらいの重みを感じた。
夢にまで見た美智香との間に出来た子を見つめながら、真弥は感激して落涙してしまったが、このような場面を何度も見てきている看護士は、真弥から赤ちゃんを受け取ると
「お父さん、今日はこれで一旦お家に帰って下さい。
また明日、赤ちゃんとママさんに会いにきてあげて。
今日はゆっくり寝て下さい。」
と、淡々とした口調で言った。
「わかりました。
色々ありがとうございます」
真弥はぺこりと頭を下げた。
その後、真弥は一階に降り、受付から
「正面玄関はもう閉まっていますので、こちらから出て下さい」
と、言われて通用口を案内された。
疲労と安堵と希望に包まれながら、真弥は自宅に向かって歩き出したのだった。
3
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる