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深層

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「別にこっちに私のものなんて何も置いてないし」

「えっ、じゃあ何のためにこんな田舎まで来たの?」

恵太は不思議そうに莉愛を見つめて言った。

「そんなの決まってるじゃない

恵太、アンタとするためよ」


「するためって…

エッチ?」


「そうよ。
わかりきった事を聞き返さないで。」


「莉愛ちゃん…

ワタシ、女ホルの影響で、最近そういう欲求が全然起きなくなったのよ。

だから、ちゃんと出来るかどうか…」


「そんなのやってみないとわかんないじゃん」


「まあ、そうだけど…」


「寝る時、また来るから」

莉愛は恵太にそう言うと、部屋を出ていってしまった。

恵太はしばらくの間、動けずに考えるような仕草をしていたが、すぐに自分も一階に降りていった。


 

伊東家では、ささやかではあるが、莉愛の歓迎会が行われ、由香里の手料理が沢山振る舞われた。


「あ、美味しい!

やっぱり由香里さんの料理は最高」

莉愛はその一つ一つの料理を美味しそうに食べた。


敦も由香里もその姿を、目を細めて見ていたが、恵太だけは、莉愛がここに来た真の理由を聞かされた為に、若干憂鬱になっていた。



「へえ、トモがバーをね…」

敦は莉愛の話を聞いて、意外な顔をした。

「うん。
お友達が経営してたお店を譲り受ける形で。

パートナーのユウさんと二人でするみたいなんだけど、まもなくオープンするって言ってた。」


「ねえ、あっちゃん
一度行ってみたいと思わない?
トモさんのお店」

逆に由香里は、興味津々で敦に向かって言った。

「ああ、そうだね
向こうに行った時は、一度お邪魔しよう」



莉愛は、敦と由香里の雰囲気の良さを感じ

「由香里さん、パパとの新婚生活はどうですか?」

と、話題を変えて由香里に質問した。

「えっ、新婚生活?

うん、ホントに最高よ。
今が人生で一番幸せに暮らしてる」

由香里は照れる事なく、莉愛に対して本心を吐露した。

「子供の前でそこまでハッキリ言うんだ
外人みたい」

日本人らしからぬ直接的な母の表現に、恵太は皮肉っぽい言い方をした。

「いいじゃない、恵太

自分の親が仲良くするのって、子供にとっては最高じゃん。

喧嘩ばかりされたらたまったもんじゃない」

莉愛の言葉を聞いた敦は

「莉愛には負けるよ」

と、言って笑った。


「私と恵太がここで幸せに暮らせているのも全部莉愛ちゃんのおかげなの。
心から感謝してるわ…」

由香里は先ほどとは打って変わって、少し神妙な言い方をした。

「私も由香里さんに出会えて本当によかったです。

こんな美人で優しい女性とパパが結ばれて、私もすごく嬉しいし、今日、久しぶりに二人を見て、やっぱりステキな夫婦だなって。」


「莉愛ちゃん…」

子供らしからぬ莉愛の言葉だったが、由香里の胸には思いっきり刺さり、涙が溢れ出た。
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