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光復

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達也もまた室内に入ってきた男達に体を押さえつけられ、拘束された。


達也は目の前で同じような状態になった桐山の方を見たが、突然の事に呆然とし、抵抗する素振りも見せていなかった。


(なぜ、ここがわかった?…)


達也はあっさりと場所を特定された事に疑問を感じたが、真相を知れば、自分の詰めの甘さが露呈したと言わざるを得なかった。



事件が大きく動き出したのは、これより八時間前の事だった。








いつものようにレギンドー本部に出勤してきた和俊だったが、美智香からのLINEが入っている事に気付き、何事かと電話をかけた。



「美智香さん
どうされたんですか」


美智香は和俊に事の顛末を詳しく話した。


「トモと真弥君が…」


「私はあの男達にお金を渡しても良いと思っています。

ですが、渡したところで本当に二人を解放してくれるか甚だ疑問で…

並行して何か解決の糸口は無いかと、こうして後藤さんに連絡させていただいたんです。
私もよく知らない桐山の事はともかく、佐藤の事なら、何かわかる人がいるじゃないかって…」


「…


美智香さん」



「はい?」



「一度電話を切らせて下さい。

ちょっと確認したい事があって。
すぐにかけ直します。」


「わかりました。
よろしくお願いします」


和俊は電話を切ると、立ち上がり、事務所を出ていった。

エレベーターで四階まで行き、商談ブースに入っていくと
フリースペースでコーヒーを飲みながらパソコンを開く片上の姿を見つけた。


「片上バイヤー」


片上は顔を上げ、声をかけてきたのが和俊だとわかると、不思議そうな顔をして言った。


「あ、おはようございます

どうしたんですか?」


「おはようございます。

片上さん、佐藤社長がよく来てたじゃないですか

アポ無しで」


「ええ。
あの人しつこいからねえ

でも、ここ最近は来てないよなあ」



「たしか、東京に出てきたって言ってたと思うんですが、今の会社の住所ってわかったりします?

名刺とかもらってませんか」


「あー、そういえば言ってましたねえ

後藤さん、よく覚えてますね。

名刺か…捨てたんじゃなかったかな」


片上はそう言って笑いながら自分の名刺入れや、手帳の中を確認した。



「あー、ありました。コレコレ

でも、後藤さん、佐藤さんに何か用でも?」



「いえ、ちょっと連絡したい事がありまして。

これ、お借りします」



「いや、返さなくていいですよ。
あそこと仕事することは絶対にないですし。」


片上はまた笑って言った。


和俊は片上に頭を下げて、その場を後にした。


そして、廊下に出ると、すぐに美智香に電話を入れた。



「もしもし、美智香さん。
すいません、お待たせしちゃって」


「いえ…

それで、何か手掛かりが?」



「これは僕の勘でしかないですが、トモとご主人が監禁されているのは、ここだと思うんです。」


和俊は、達也の新事務所の住所を読み上げた。

「たしかに…
そこなら人の目につく事もないですし、あり得るかもしれません。」


「後で名刺の写メを送ります。


場所さえ特定できれば警察に言ってもいいんじゃないですか。」


「ええ。そうですね

本当にありがとうございます」

美智香は頭を深々と下げて電話を切った。



「美智香さん」


側にいたユウが不安げに言うと


「ユウさん

重要な事がわかったかもしれない

もうこれに賭けてみるしかないわ。」


美智香は力強く頷いた。
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