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貴賤

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美智香の家にユウが到着した。


「ごめんなさい、ユウさん

こんな事に巻き込んでしまって。」


「いえ、ワタシは全然…


それで美智香さん、この後どうされるんですか」


「ええ。五千万を佐藤の口座に振替をしなければなりませんが、今はそんな大金を簡単に動かせないので、明日銀行が開いたら書類を書きに行きます。
とりあえず、個人での限度額1000万を振替ますが、その他の分は手続き後になります。」


「と、いうことはすぐに全額というわけではないのですね」


「ええ。明日朝に出来ることはそこまでです。

その後、桐山に連絡する事になっています。」


「わかりました。

もうそれほど時間はありませんが、最善の道を模索しましょう。」


ユウは美智香の手を握り、頷きながら言った。









その頃、智は桐山によってと或るビルの一室に身柄を拘束されていた。

そして、そこには達也も真弥もいた。
ただ、真弥は意識が無いようで、先ほど写真で見せられた通り、ソファに寝かされている状態だった。

「真弥クン…

アンタ達、真弥クンに一体何をしたの!」


「何もしてないですよ。
ただ、大の男に暴れられたら我々としてもどうにもならないので、少しだけ寝てもらってます」


「達也さん、あなた…
こんな事して、もう破滅しか待っていないわよ。」


智は、側に立っていた達也に怒りの視線を向けた。


「そんな事はわかってる!

わかっているさ。

もう、詰んでる事くらい…」

一気に老け込んだ様子の達也は、智と目を合わさないまま、吐き捨てるように言った。


「だったら考え直すのよ。

今ならまだ遅くないわ。ここから真弥クンを解放するなら警察にいったりしないわ。」


「いや、この男を解放しても俺の会社が持ち直す事もない。
だったら、せめて美智香にも俺と同じくらいの地獄を味合わせてやりたい。」


「逆恨み以外の何物でもないじゃない。」



「話が盛り上がってるところ済まないが、佐藤さん

トモちゃんを押さえつけといてくれないかな」

桐山は二人の会話に入ると、達也に視線を送りながら言った。

達也は頷き、智を羽交締めにした。


「ちょ、ちょっと、何するのよ!」

智は振り解こうとしたが、非力なニューハーフでは体の自由を取り戻す事は出来なかった。

桐山は智の手首を持ち、予め準備しておいた注射器を取り出し、一切の迷いもなく、智の腕に注射針を刺した。
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