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信無くば立たず

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「佐藤さん。
そんな言葉を信じると思っているんですか。

あなたが酷い事をして傷つけた美智香を、どの面下げて戻って来いというのかと思えば、断っても執拗に付き纏ってくる。

それが、話し合いに応じて、聞き入れなければ諦める?

とてもじゃないが、信用出来ませんね。」


真弥は吐き捨てるように言った。


「ええ。たしかにあなたの言う通りです。
私は美智香に酷い事をして、離婚することになり、生き甲斐にしていた仕事も奪ってしまった。

それについては何の言い訳も出来ません。

ただ、美智香もあなたの事はすごく愛しているようですし、私自身もヨリを戻したいとか、そんな気持ちはさらさらないんです。

ですが、仕事面では違います。
美智香ほど才能あふれる人間を私は見た事がない。
だから、もう一度輝ける場所を提供したい。
それだけです。他意はありません。」


「本当にそうでしょうか。
綺麗事を並べていますが、あなたは仕事面で美智香の抜けた穴を埋める事が出来ず、苦しんでおられる。
それを打破するために美智香の力が必要。

これが真相じゃないんですか」

達也の言葉を真っ向から否定する真弥に、それまで黙って聞いていた桐山が口を挟んできた。


「佐々木さん、あなたのおっしゃる通りですよ。

あなたの奥さんがいたからこそ、佐藤さんの会社は上手く回っていたんです。

奥さんがいなくなった途端、何もかもが悪い方向へ進み、にっちもさっちもいかない状態に陥ってしまった。

この窮地を救うには奥さんの力が必要なんですよ。間違いなくね。」


「美智香にはその気はありませんよ。」


「ええ。それもこの前、お会いしてみてよくわかりました。

ですから、最後のチャンスとして、奥さんが心から愛するあなたを説得出来たのなら…そう思い、こんな待ち伏せみたいな事をした次第なんです。」


「僕も美智香と同じ気持ちです。
彼女が嫌がる事を勧めるわけないです。」


「まあ、そうでしょう。

ですが、最後にお話だけ聞いてもらえませんか。
これで終わりにしましょう。

もし、佐々木さんに聞き入れてもらえなければ、こちらも諦めますし、佐藤さんの会社も清算します。」


桐山の話に、真弥は一瞬考える素振りを見せた。だが


「あなた方のお話をお聞きし、それでダメなら諦めていただけるんですね。

約束してもらえますか。
二度と美智香に近づかないと。」


「ええ。
私も美智香の事を今でも愛していますし、彼女を悲しませる事はしたくありませんので。
約束は守ります。」


「わかりました。
話を聞きましょう。」


真弥は二人の申し出を受け入れた。
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