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権謀術数

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「佐藤社長が、そんな事を…」


和俊は、美智香から達也と接触した事を聞き、表情を曇らせた。


「でも、話を聞いていたら、美智香さんが仮に会社に戻ったとしても、もはや立て直す事は不可能なんじゃないですか?」


ケイコの恋人山田が発言すると、和俊は頷き話を始めた。


「多分、佐藤社長は起死回生の一手として、レギンドーとの取引再開を餌に、その桐山という男の会社から運転資金を引っ張ってきているようですが、実際のところレギンドーに商品を卸す事は絶望的でしょう。
その辺の事は佐藤社長もわかっているとは思いますが。」


「だったら、妻が戻る必要なんて無くないですか?」

真弥が質問すると、和俊は首を傾げた。


「そうですね。
たしかにおかしいとは思います。美智香さんに恋愛感情があって執着しているのならわかりますが、ビジネスの事だけで言っているとなると、何故そこまでこだわるのか…
ちょっと謎です。」


「ひょっとしたら、美智香さんの所有する現金資産が目的なんじゃないですか?」

山田が再び発言すると

「現金資産?」

美智香は驚いて、山田の方を見た。

「ヤバイところから金を借りているのに、事業は一向に好転せず、首が回らない。
そして、返済に苦しむようになり、元ご主人は美智香さんの金を引っ張り出すつもりで近づいてきてるとしたら…
そういう考え方は出来ませんか」


「あるかもしれませんね」

和俊は頷いた。


「たしかに私はある程度の現金は持ち合わせています。

ですが、そんなバカな話に乗るわけないじゃないですか。」



「お姉ちゃん、この際、お姉ちゃんがどう思っているのかは向こうにとって重要じゃないのよ。

達也さんには桐山というとんでもない悪人が付いてるの。
万が一拉致まがいのことをされて、捕まってしまったら…

桐山はお姉ちゃんを服従させるために覚醒剤を使うのに、何の躊躇もしないわ。」


「そんな…
犯罪じゃないのよ。
そこまでする?」


「実際に薬漬けの廃人にされかけたワタシが言うんだから、間違いないわ。」


「警察に連絡しといた方が…」

真弥が言うと、智は首を横に振った。


「いえ、これはあくまでもそういう可能性があるという話で、実際にこちらが何かをされたわけじゃない。

今の段階で警察が動いてくれる可能性はゼロよ。」


今後どう出てくるかわからない達也と桐山に、美智香の心境は不安でしかなかった。
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