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差配
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真弥の老獪な受け答えにより、達也は一気に形勢不利となり、言葉に詰まってしまった。
「ハッハッハ
これは美智香さんのお若い旦那さんに一本取られてしまいましたね。
こういう時はサッと引くのも戦術の一つです。
佐藤さん、今日のところはこの辺で退却しましょう。」
桐山が笑って立ち上がると、達也も引き攣った笑みを浮かべつつ、一緒に立ち上がった。
「皆さん、お楽しみのところをお邪魔しました。
ところで、ウチの会社は企業だけではなく、個人への貸付も行っておりますので、何かご入用の際は是非」
桐山は机に名刺を出して言った。
そして、智を見て
「トモちゃん、かなり上物の即キメ出来るのを手に入れたから、よかったらこの番号に電話して下さい。」
と、言い放った。
智は無表情で何も言わず、視線を合わさなかった。
達也と桐山は美智香の前に置かれた伝票を取り、支払いを済ませ、そのまま去っていった。
男二人が乱入するまでは楽しく会話していた四人だったが、重苦しい空気の中、誰も喋らなくなった。
そんな中、美智香が
「ユウさん、ごめんなさい
何も関係ないあなたを巻き込んでしまって…」
ユウに向かって言い、頭を下げた。
「いえ、ワタシは全然…
でも、大丈夫ですか?
あの二人、あんまり良い人とは言えない感じがしましたけど。」
「お姉ちゃん、ユウちゃんに全て話してもいい?」
智が言うと、美智香は静かに頷いた。
智は美智香と達也の事、真弥との出会いから今日まで、そして、桐山と自分との因縁を丁寧に話した。
「えっ、そんな事があったんですか…
浮気して会社を辞めるように持っていくなんて、最低な男じゃないですか!」
「最初は本当に悔しくて悔しくて、毎日泣いてたわ。
でも、そのおかげで、最愛の主人と出会う事が出来たんです。
これほどの幸せを人生で感じた事がなかったから、毎日が夢のような気分で送れているの。
仕事の事なんて今となっては何の未練もないのよ。」
「それは良かったです。
でも、トモちゃんのはれっきとした犯罪じゃないですか
そっちの方も酷いです」
「そうよ。ワタシも危うく犯罪者として起訴寸前まで行ったからね。
あの桐山っていうジャンキーだけは許せないのよ。」
「とにかく、僕らの前にアイツが現れた事には変わりないんだ。
これから最大限に注意して生きなきゃならないってことだよ。」
真弥の言葉に三人は頷いた。
「でも、真弥クン
さすがは男の子だね。ホントに頼りになったわ」
智は真弥の奮戦ぶりを讃えたが、ユウは
「実はこのテーブルには男三人と女一人なんだけど」
と、真顔で言った。
「あ、ホントだ」
美智香は声を出して笑った。
ユウの一言で重苦しい空気が一気に吹き飛んだのだった。
「ハッハッハ
これは美智香さんのお若い旦那さんに一本取られてしまいましたね。
こういう時はサッと引くのも戦術の一つです。
佐藤さん、今日のところはこの辺で退却しましょう。」
桐山が笑って立ち上がると、達也も引き攣った笑みを浮かべつつ、一緒に立ち上がった。
「皆さん、お楽しみのところをお邪魔しました。
ところで、ウチの会社は企業だけではなく、個人への貸付も行っておりますので、何かご入用の際は是非」
桐山は机に名刺を出して言った。
そして、智を見て
「トモちゃん、かなり上物の即キメ出来るのを手に入れたから、よかったらこの番号に電話して下さい。」
と、言い放った。
智は無表情で何も言わず、視線を合わさなかった。
達也と桐山は美智香の前に置かれた伝票を取り、支払いを済ませ、そのまま去っていった。
男二人が乱入するまでは楽しく会話していた四人だったが、重苦しい空気の中、誰も喋らなくなった。
そんな中、美智香が
「ユウさん、ごめんなさい
何も関係ないあなたを巻き込んでしまって…」
ユウに向かって言い、頭を下げた。
「いえ、ワタシは全然…
でも、大丈夫ですか?
あの二人、あんまり良い人とは言えない感じがしましたけど。」
「お姉ちゃん、ユウちゃんに全て話してもいい?」
智が言うと、美智香は静かに頷いた。
智は美智香と達也の事、真弥との出会いから今日まで、そして、桐山と自分との因縁を丁寧に話した。
「えっ、そんな事があったんですか…
浮気して会社を辞めるように持っていくなんて、最低な男じゃないですか!」
「最初は本当に悔しくて悔しくて、毎日泣いてたわ。
でも、そのおかげで、最愛の主人と出会う事が出来たんです。
これほどの幸せを人生で感じた事がなかったから、毎日が夢のような気分で送れているの。
仕事の事なんて今となっては何の未練もないのよ。」
「それは良かったです。
でも、トモちゃんのはれっきとした犯罪じゃないですか
そっちの方も酷いです」
「そうよ。ワタシも危うく犯罪者として起訴寸前まで行ったからね。
あの桐山っていうジャンキーだけは許せないのよ。」
「とにかく、僕らの前にアイツが現れた事には変わりないんだ。
これから最大限に注意して生きなきゃならないってことだよ。」
真弥の言葉に三人は頷いた。
「でも、真弥クン
さすがは男の子だね。ホントに頼りになったわ」
智は真弥の奮戦ぶりを讃えたが、ユウは
「実はこのテーブルには男三人と女一人なんだけど」
と、真顔で言った。
「あ、ホントだ」
美智香は声を出して笑った。
ユウの一言で重苦しい空気が一気に吹き飛んだのだった。
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