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「でも、ユウさんがいてくれて良かったです。

智に家に泊めてほしいって言われたんですけど、私、今は東京の外れの団地で暮らしてるので、泊める部屋もなくて」

美智香はコーヒーを一口飲み、そして受け皿に置きながら言った。


「いえ、ワタシとしては願ったり叶ったりで、本当に運が良かったです。」

ユウはニコリと笑って美智香に言った。


「すいません。
僕の給料が安いので…」

真弥は恐縮気味に肩を窄めると


「ちょっと真弥クン
あなたまだ入社一年目でしょ?
そんなの当たり前じゃない。これからよ、これから」

智は姉の若い亭主を励ました。


「歳の差があるっておっしゃいましたけど、お二人を見ていると本当に素敵だし幸せそうに見えます。

とてもお似合いのカップルだと思います。」

ユウが言うと、佐々木夫妻は揃って頷いた。


「私も主人に出会うまでは、こういう関係には否定的だったんですけど、勇気を出して交際してみたら、どんどんのめり込んでしまって。

若い頃から仕事に燃えてて、男に負けたくないっていう一心で生きてきたんですけど、主人にはそれがいかにバカバカしいものかっていうのを教えられた気がします。

今の世の中、男女平等なんて言葉が常に叫ばれてますけど、同じ仕事をして給料が違ったり、お茶汲みとか雑用ばかり女がやらされるのは論外として…
結局は男と女って違って当たり前ですし、男女に関わらず個人で得手不得手っていうのもあると思います。

何でもかんでも男と同じ、男に負けられないって生きてきた自分の人生が間違ってたことを、この歳になって遅まきながら気付いたんです。

だから、今は本当に幸せです。」


「お姉ちゃん、話が長いよ」

智は美智香の熱い語りに呆れた口調で言った。


「ごめんなさい」

美智香は顔を真っ赤にして俯いた。


「いえ、美智香さん

ワタシもそう思います。

女性とニューハーフで、立ち位置は全然違いますが、ワタシも若い頃は、フツーの女性に負けられないとか、女性よりもキレイになってやる、とか、肩肘張って生きてきました。

でも、そんな事は自分で判断できるものじゃなく、結局は相手がどう思ってくれるかなんです。

その域に達するまでに時間を要しましたし、病みました。

他人がどうかじゃなく、本当に好きな人に出逢い、その人に受け入れてもらえる事が何よりも幸せな事だと、それがわかってからはラクに生きられるようになりました。

すいません、ワタシも長々と語ってますね」


ユウもまた顔を真っ赤にして視線を落とした。

その姿に三人は優しげな笑みを浮かべたのだった。
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