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「僕が小学校の教諭をしているとき、智が莉愛を連れて転入手続きをしに来ました。

あまりにも美しい顔に見惚れてしまったんですが、彼女の口から自分は女性ではなくニューハーフだという事を知らされました。
そして、智は莉愛の母親ではなく父親だという事も。

智は当時テレビにも出演していて、顔もどこかで見たと思っていましたので、私も彼女の説明を聞いて、それが事実であるとわかりました。」


「たしかに、あれほどの美人はいませんものね。」


「ええ。当時は今よりも少し痩せてて、エグいくらいの美貌を誇っていました。

僕は、この特殊な家庭環境にある親子の事が気になって、依怙贔屓と取られても仕方ないような、過剰なまでの干渉をしてしまいました。家にも行ったり…

それからまもなく、僕は智の事を好きになってしまいました。

彼女が働くニューハーフのお店にも足繁く通うようになったのです。」


「そうだったんですね。
でも、その気持ちはすごくわかるような気がします。
智さんは男とか女とか関係なく、魅力溢れる方ですから。」


「ええ。

私は智に交際を申し込み、彼女は悩んだ挙句、私の申し出を受けてくれました。

私は彼女と結婚したいと考えるようになりましたが、莉愛の学校の担任をしている手前、これが周囲にバレたら、私の教師生命はその瞬間に終わってしまうという…恐怖感が常に付き纏ってきました。

その予感はほどなくして現実のものとなります。

タレントとして名の知られていた智と私の交際が、面白おかしく週刊誌のネタにされ、ホテルを出てくるときの写真と記事が掲載されました。

終わったと思いました。

私は、自分でもあまりにも無責任だとは思いつつ、すぐに学校を辞めました。」

「…」

「私は智に、実家を継いで農家になる事を話し、一緒に来ないかと提案しました。

智は二つ返事でOKしてくれて、私は智と二人を連れてここに舞い戻ってきたのです。

しかし、私の実家は、父が亡くなり、有機栽培にも失敗して借金だらけでした。
このままいけば間違いなく破綻する状況でしたが、智は組合長に掛け合い、畑の運転資金を調達してきました。」


「智さんが、ですか…」


「ええ。

お恥ずかしい話なんですが、この辺りには古くから変な習慣がありまして、新婚家庭の嫁を村の長に差し出すという…

智は私達の歓迎会の後、組合長に連れ出されて犯されてしまいました。
私は情けない事に酔い潰れてその事に全く気付いていませんでした。」

「そんな事が‥」

由香里は敦の話に、愕然とした。
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