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非業
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前夜の激しすぎるセックスで、すっかり朝寝坊してしまった莉愛は、全身に疲れを感じながら下に降りてきた。
しかし、この時間帯は皆で朝食を摂っているはずが、誰も食卓にいなかった。
「莉愛ちゃん」
名前を呼び止めたのは由香里だった。
「あ、おはようございます、由香里さん…
ママは?」
「莉愛ちゃん
さっき病院から連絡があって、お婆様の容態が急変したって…」
「えっ…」
莉愛が茫然のする中、智が後ろから声をかけた。
「莉愛ちゃん、今から病院に行くからすぐに支度しなさい。」
「え、あ、うん…」
「由香里さん、申し訳ないですが、またお車をお借りします。」
「いえ、全然…使ってください。
私は恵太と畑に出かけてきます。
こちらの事はお任せ下さい。」
「すいません、よろしくお願いします」
智も慌てた様子で由香里に頭を下げると、身支度を整えた。
「トモ、準備できたか?」
玄関から敦の声が聞こえてきた。
「あなた、莉愛がまだなの。
莉愛ちゃん、ごめん、ちょっと急いでくれる?」
「うん
すぐ準備するわ」
莉愛は慌てて洗面所の方に向かった。
由香里所有の車で敦と智が待つ中、莉愛は最低限の準備だけを済ませ、表に飛び出してきた。
そんな莉愛を後部座席に乗せると、敦は車を発進させ、少し急ぎ気味で家の前の道を下っていった。
「おばあちゃん大丈夫かなあ」
不安げに見守る恵太に、由香里は
「ちょっと厳しいみたい…」
と、ポツリと言った。
午前9時前、敦、智、莉愛は病院の駐車場から走って病室に向かったが、対面したのは光江の亡骸だった。
到着の三十分前に息を引取ったと病院のスタッフから告げられた敦は、ポロポロと涙をこぼし、母の遺体に縋り付いた。
智もそんな夫の後ろ姿を見ながらハンカチで目頭を押さえ、肩を震わせた。
だが、実の息子の敦よりも、一番ショックを受けていたのは莉愛だった。
自分がちゃんと起きていれば、もっと早くに病気に到着し、祖母の死に目に間に合ったかもしれない。
自分はともかく、敦は無念に違いない
「おばあちゃん…うっ…
私のせいで…間に合わなくて…ごめんなさい…」
莉愛は両手で顔を覆って泣き崩れ、智の胸に縋りついた。
「母さんは、天寿を全うしたんだよ。
莉愛…」
敦も泣きじゃくる莉愛の肩に手を置き、慰めの言葉をかけた。
そして、三人はあらためて光江の顔を見つめ、また泣いた。
入院前に比べ、見る影もないくらいに痩せ細ったその姿は、闘病生活の過酷さを表すものであった。
しかし、この時間帯は皆で朝食を摂っているはずが、誰も食卓にいなかった。
「莉愛ちゃん」
名前を呼び止めたのは由香里だった。
「あ、おはようございます、由香里さん…
ママは?」
「莉愛ちゃん
さっき病院から連絡があって、お婆様の容態が急変したって…」
「えっ…」
莉愛が茫然のする中、智が後ろから声をかけた。
「莉愛ちゃん、今から病院に行くからすぐに支度しなさい。」
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「いえ、全然…使ってください。
私は恵太と畑に出かけてきます。
こちらの事はお任せ下さい。」
「すいません、よろしくお願いします」
智も慌てた様子で由香里に頭を下げると、身支度を整えた。
「トモ、準備できたか?」
玄関から敦の声が聞こえてきた。
「あなた、莉愛がまだなの。
莉愛ちゃん、ごめん、ちょっと急いでくれる?」
「うん
すぐ準備するわ」
莉愛は慌てて洗面所の方に向かった。
由香里所有の車で敦と智が待つ中、莉愛は最低限の準備だけを済ませ、表に飛び出してきた。
そんな莉愛を後部座席に乗せると、敦は車を発進させ、少し急ぎ気味で家の前の道を下っていった。
「おばあちゃん大丈夫かなあ」
不安げに見守る恵太に、由香里は
「ちょっと厳しいみたい…」
と、ポツリと言った。
午前9時前、敦、智、莉愛は病院の駐車場から走って病室に向かったが、対面したのは光江の亡骸だった。
到着の三十分前に息を引取ったと病院のスタッフから告げられた敦は、ポロポロと涙をこぼし、母の遺体に縋り付いた。
智もそんな夫の後ろ姿を見ながらハンカチで目頭を押さえ、肩を震わせた。
だが、実の息子の敦よりも、一番ショックを受けていたのは莉愛だった。
自分がちゃんと起きていれば、もっと早くに病気に到着し、祖母の死に目に間に合ったかもしれない。
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私のせいで…間に合わなくて…ごめんなさい…」
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「母さんは、天寿を全うしたんだよ。
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敦も泣きじゃくる莉愛の肩に手を置き、慰めの言葉をかけた。
そして、三人はあらためて光江の顔を見つめ、また泣いた。
入院前に比べ、見る影もないくらいに痩せ細ったその姿は、闘病生活の過酷さを表すものであった。
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