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あいのうた
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由香里の愛の告白に、敦は言葉を失ったが、このような状況になる事は、最初に由香里を抱いた時から予測できた事だった。
「由香里さん…
僕は…」
由香里の事を自分も愛している
そう答えたかった。
しかし…
敦の頭の中では様々な思いが去来し、そして、消えていった。
小学校の教師を目指して大学に進み、希望が叶った二十代前半
無我夢中で教師生活を頑張り、気がつけば三十歳になっていた。
そんなときに自分の受け持つクラスに転入してきたのが、吉岡智と莉愛の親子だった。
勝手のわからない吉岡親子に、敦は二人が困らないよう最大限の配慮をした。
智は母親ではなく、父親だということがわかり、衝撃を受けたが…
そのうち、あまりにも美しいニューハーフ、智に心を奪われて本気に恋をし、彼女が働く風俗店にまで訪ねていった。
そんな敦の気持ちを智も受け入れ、交際するようになったが、その禁断の関係が、タレント活動をして知名度のあった智の事を報じる週刊誌を通じて、世間に知られる事となり、敦は学校を自ら辞めざるを得なくなってしまったのだった。
ちょうど、父が亡くなり、実家の畑を処分しようかと考えていた時期だったが、教師をクビになったのなら、実家に戻り畑を立て直そうと、考えを改めた。
智も莉愛も自分に付いてきてくれて、籍こそ入れられないままここまで来たが、智は妻として一生懸命尽くしてくれて、貧乏生活にも文句一つ言わず付いてきてくれた。
これについては感謝の気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいで、敦は自分の農家としての才覚の無さを心から恥じていた。
だが、地元に戻り七年余り、何一つ上手くいかない生活の中、敦の頭には、後悔という言葉が浮かんでは消え、消えては浮かぶというような事が続くようになっていた。
それは、教師を続けていたら?
という、世界線への思いである。
たしかに、元タレントのニューハーフに恋をしたのは自分の責任であり、世間から軽率だと言われても、自業自得としか言いようがない。
だが、智が週刊誌の取材さえ受けて写真さえ撮られていなければ、こんな人生は送ってなかった筈だ。
今も教師を続け、畑は処分して母親の光江も東京に呼び寄せて暮らしていたかもしれない。
そうしていたら、母も病気にならず、今も元気に暮らしていたかもしれない。
かもしれない…
こんな事は今さら言っても、考えても仕方ない事とわかってはいるが、人生があまりにも上手くいかないと、どうしてもその方向の思考になってしまう自分がいた。
そんな中での、由香里との関係
敦は溺れずにはいられなかった。
由香里の求愛に応えるつもりがなかったのに、気がついたら…
強く抱きしめて言っていた。
「由香里さん、僕もあなたを愛しています」
と…
「由香里さん…
僕は…」
由香里の事を自分も愛している
そう答えたかった。
しかし…
敦の頭の中では様々な思いが去来し、そして、消えていった。
小学校の教師を目指して大学に進み、希望が叶った二十代前半
無我夢中で教師生活を頑張り、気がつけば三十歳になっていた。
そんなときに自分の受け持つクラスに転入してきたのが、吉岡智と莉愛の親子だった。
勝手のわからない吉岡親子に、敦は二人が困らないよう最大限の配慮をした。
智は母親ではなく、父親だということがわかり、衝撃を受けたが…
そのうち、あまりにも美しいニューハーフ、智に心を奪われて本気に恋をし、彼女が働く風俗店にまで訪ねていった。
そんな敦の気持ちを智も受け入れ、交際するようになったが、その禁断の関係が、タレント活動をして知名度のあった智の事を報じる週刊誌を通じて、世間に知られる事となり、敦は学校を自ら辞めざるを得なくなってしまったのだった。
ちょうど、父が亡くなり、実家の畑を処分しようかと考えていた時期だったが、教師をクビになったのなら、実家に戻り畑を立て直そうと、考えを改めた。
智も莉愛も自分に付いてきてくれて、籍こそ入れられないままここまで来たが、智は妻として一生懸命尽くしてくれて、貧乏生活にも文句一つ言わず付いてきてくれた。
これについては感謝の気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいで、敦は自分の農家としての才覚の無さを心から恥じていた。
だが、地元に戻り七年余り、何一つ上手くいかない生活の中、敦の頭には、後悔という言葉が浮かんでは消え、消えては浮かぶというような事が続くようになっていた。
それは、教師を続けていたら?
という、世界線への思いである。
たしかに、元タレントのニューハーフに恋をしたのは自分の責任であり、世間から軽率だと言われても、自業自得としか言いようがない。
だが、智が週刊誌の取材さえ受けて写真さえ撮られていなければ、こんな人生は送ってなかった筈だ。
今も教師を続け、畑は処分して母親の光江も東京に呼び寄せて暮らしていたかもしれない。
そうしていたら、母も病気にならず、今も元気に暮らしていたかもしれない。
かもしれない…
こんな事は今さら言っても、考えても仕方ない事とわかってはいるが、人生があまりにも上手くいかないと、どうしてもその方向の思考になってしまう自分がいた。
そんな中での、由香里との関係
敦は溺れずにはいられなかった。
由香里の求愛に応えるつもりがなかったのに、気がついたら…
強く抱きしめて言っていた。
「由香里さん、僕もあなたを愛しています」
と…
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