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綻び

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智は由香里の車を借りて、莉愛を迎えに来ていた。

あの無人の駅舎に。


いつもと違うのは恵太も一緒に来ていた事だった。


「莉愛ちゃんの乗ってる電車、まだかな」


「もう着くわよ。

ほらっ、向こうに見えてきたわ」


智がそう言うと、1両編成のボロボロの電車が、いや、正確に言うと、電気ではなくディーゼルで動いているのだが、兎にも角にも、莉愛を乗せた車両がホームに到着した。


そして、今日も、この駅に降りたのは、莉愛ただ一人だった。


「莉愛!」


智と恵太は莉愛の姿を見て駆け寄った。


「あ、ママ

それに恵太も。

ただいまあ。」


莉愛はたった四ヶ月離れていただけなのに、一段と大人の女性に近づいており、智を驚かせた。


「莉愛、背が少し伸びたんじゃない?」


「ん?
そうかなあ、身体測定ではそんな変わんなかったけど。


てか、恵太!

アンタ変わりすぎじゃない?」


「えっ、変わったように見える?」


「うん。女子じゃん、完全に。

化粧もしてるし、スカート履いてるし。

雰囲気自体が女子になってるよ。」


「莉愛にそう言ってもらえて嬉しいよ。

ワタシ、トモさんもだけど、莉愛みたいな女子になるのが目標なのよ。」


「もうちょっと、高い目標持った方がいいよ。
私とかじゃなくて。」

莉愛はそう言って笑った。


智は莉愛と恵太を後部座席に乗せ、また一時間以上かかる山道に車を走らせ、家に帰ってきた。



「お帰りなさい、莉愛ちゃん。」


「お帰り」


家には既に敦も帰っており、由香里と共に出迎えた。


莉愛は挨拶もそこそこに、敦に光江の状況を確認した。


「パパ

おばあちゃんはどうなの?

お正月をお家で迎えられないの?」


「うん。
パパも一縷の望みを持ってたんだが、かなり弱ってて
家に帰るのは無理だと判断されたんだよ。」


「そうなんだ…
明日、私も病院について行ってもいい?」


「ああ、いいよ。

おばあちゃんも莉愛の顔見たらすごく喜ぶと思うよ。」


敦は莉愛の肩に手を置いて言った。


「莉愛さん。
今日は智さんが迎えに行かれてたので、私がご飯の用意をさせていただきました。
お口に合うかどうかはわかりませんが」


「由香里さんが作ってくれたんですか!
それは楽しみ!」

莉愛は智と敦が別れる事を決め、由香里と敦が結婚するという事実を知らない。

逆に由香里と恵太が伊東家に馴染んでいて雰囲気が良いとさえ思っていた。

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