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symmetry

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敦不在の中で行われる農作業は、境親子の頑張りもあって、マイナスどころかプラスに転じた感さえあった。

農家としてのセンスがピカイチで、敦よりもよっぽど役に立つ由香里
そして、大ファンの智に認められようと必死に頑張る恵太の働きは、智を驚かせ、そして喜ばせた。


農作業から帰ってくると、智による恵太へのニューハーフとしての英才教育が施された。

主にメイク、所作、女声の発生方法など、事細かに行われたが…


「トモさんトモさん」


「ん?
どうしたの恵ちゃん」


「トモさんは女性ホルモンはどうされてるんですか」

恵太は最も関心のある事の質問をした。

「女性ホルモン剤のこと?」


「はい。こんな田舎では注射してくれるところが無いんじゃないですか?」


「恵ちゃん、詳しいわね」


「はい。前からこういう事だけはめちゃくちゃ勉強してきましたから。」


「そうね。
東京に住んでた時は、行きつけの美容外科っていうのがあって、そこで注射打ってたのよ。

ワタシは去勢してるし、回数はそれほど必要としてないけど、全くナシってわけにはいかないから。

こっちに来てからは、恵ちゃんが言ったように、そんな病院なんて全然ないから、ネットで購入した経口薬を服用してるのよ。」


「そうなんですね」


「経口薬は内臓への負担もかかってしまうし、ホントは注射が一番良いんだけどね。
こればかりは仕方ないわ。」


「トモさん、そのお薬って見せてもらう事できますか?」


「見せるくらいなら全然良いわよ」

智は棚から普段服用しているホルモン剤を取り、恵太に見せた。


「へえ、1種類じゃないんですね」


「いわゆる女性ホルモン剤っていうのと、ワタシはアンチアンドロゲンの薬も飲んでる」

「アンチアンドロゲンて、男性ホルモンを抑える薬ですね」


「恵ちゃん、さすがね
よく勉強してるわ。」


「トモさん、ワタシも飲んでみたいんですけど、分けてもらう事はできませんか?」


「恵ちゃん、これは諸刃の刃っていうくらいの薬でね、見方によったら毒と同じなのよ。
勉強してるから知ってると思うけど。

ちゃんとした病院で色々調べてもらってからにした方がいいよ。
てか、良いに決まってる。」


「それはよくわかるんですが、トモさんはちゃんと調べてもらってから女性ホルモンを始めたんですか?」


「ワタシは正直に言うと何も調べずに始めちゃった。
もうおっぱいがほしくて」


「その気持ちわかります。

だから、ワタシも」

恵太は一向に引き下がる様子はなかった。
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