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研修制度
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翌日、敦はまた吉川に車を借り、町の病院まで光江を乗せて向かっていった。
莉愛は帰り支度を前日にしておこうと、洗濯物や寮に持ち込む生活物資をボストンバックにまとめていた。
智は、境 恵太とその母の由香里を迎えるべく昼ご飯の用意をしていた。
午前十一時過ぎ、一台の見慣れぬ赤いワンボックスカーが、家の前に来て停車した。
莉愛が飛び出していくと、後部座席から恵太が降りて来た。
「恵太、久しぶり」
莉愛が声をかけると、レディースのシャツとパンツを履いた恵太は、それに気付いてペコリと頭を下げた。
「莉愛ちゃん、この度はお招きいただきありがとうございます」
恵太は十六歳にしてはなかなかしっかりとした挨拶をして笑った。
「髪伸びたね。」
「うん。まだ全然だけど。
やっと後ろで括れるようになったよ」
化粧こそしていなかったが、恵太は一見すると女子に見えた。
「莉愛さん?」
続いて車から降りて来た恵太の母、由香里が莉愛に声をかけた。
「こんにちは。
ようこそ」
「こちらこそ、恵太のために声かけしていただいて本当にありがとうございます。
在学中も莉愛ちゃんだけが、優しくしてくれたって、今でも恵太が私に話すんですよ。
色々と助けてもらってありがとう。」
「いえ、私はなにも…」
そんな話をしていると、奥から智も姿を現した。
「あの、ウチの母です。
こちらは境 恵太君とお母さん」
「伊東 智と申します。
こんな田舎まで来ていただきありがとうございます。」
智が笑って挨拶すると、境親子は少し緊張気味に畏まって
「あ、この度はお声がけをしていただいてありがとうございます。
境 由香里と申します」
「境 恵太です」
二人はそれぞれが深々と頭を下げた。
少し緊張しているのは由香里の方だけで、恵太は智が現れた段階から、羨望の眼差しを向けるのであった。
「大したものは出来ないですけど、ご飯の用意をしていますので、どうぞこちらへ」
智と莉愛に促されて、境親子は家に上がった。
大したものは出来ないとは言ったが、普段よりは豪勢な料理を振る舞った智は、最後に自分の料理を運び、揃って食べる事になった。
最初は緊張して、あまり話が弾まない雰囲気だったが、莉愛が率先して話題を提供し、食事を終えて、お茶が出された頃には、徐々に緊張感が解れていった。
特に、恵太は智の一挙手一投足に目を輝かせて追っていた。
莉愛は帰り支度を前日にしておこうと、洗濯物や寮に持ち込む生活物資をボストンバックにまとめていた。
智は、境 恵太とその母の由香里を迎えるべく昼ご飯の用意をしていた。
午前十一時過ぎ、一台の見慣れぬ赤いワンボックスカーが、家の前に来て停車した。
莉愛が飛び出していくと、後部座席から恵太が降りて来た。
「恵太、久しぶり」
莉愛が声をかけると、レディースのシャツとパンツを履いた恵太は、それに気付いてペコリと頭を下げた。
「莉愛ちゃん、この度はお招きいただきありがとうございます」
恵太は十六歳にしてはなかなかしっかりとした挨拶をして笑った。
「髪伸びたね。」
「うん。まだ全然だけど。
やっと後ろで括れるようになったよ」
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「莉愛さん?」
続いて車から降りて来た恵太の母、由香里が莉愛に声をかけた。
「こんにちは。
ようこそ」
「こちらこそ、恵太のために声かけしていただいて本当にありがとうございます。
在学中も莉愛ちゃんだけが、優しくしてくれたって、今でも恵太が私に話すんですよ。
色々と助けてもらってありがとう。」
「いえ、私はなにも…」
そんな話をしていると、奥から智も姿を現した。
「あの、ウチの母です。
こちらは境 恵太君とお母さん」
「伊東 智と申します。
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智が笑って挨拶すると、境親子は少し緊張気味に畏まって
「あ、この度はお声がけをしていただいてありがとうございます。
境 由香里と申します」
「境 恵太です」
二人はそれぞれが深々と頭を下げた。
少し緊張しているのは由香里の方だけで、恵太は智が現れた段階から、羨望の眼差しを向けるのであった。
「大したものは出来ないですけど、ご飯の用意をしていますので、どうぞこちらへ」
智と莉愛に促されて、境親子は家に上がった。
大したものは出来ないとは言ったが、普段よりは豪勢な料理を振る舞った智は、最後に自分の料理を運び、揃って食べる事になった。
最初は緊張して、あまり話が弾まない雰囲気だったが、莉愛が率先して話題を提供し、食事を終えて、お茶が出された頃には、徐々に緊張感が解れていった。
特に、恵太は智の一挙手一投足に目を輝かせて追っていた。
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