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次の日、畑仕事を終えた智と敦は、莉愛を連れ立って、組合事務所に向かった。
吉川に呼ばれたからだ。
事務所には組合長の吉川の他に、副組合長の三嶋も来ていた。
「おう、来たか
まあ座れ」
吉川は智と敦に椅子を出してきて言った。
三人が座ると、吉川が話し始めた。
「三嶋さん、実はなあ
敦の母親が最近具合が悪いと言うとってな、医者に診てもらったんだが、診断の結果、ガンと言われちまってなあ」
「光江さんがか…」
「ワシも昨日連絡もろてびっくりしたんじゃ…
まあ、ここでグダグダ言うとっても何も始まらんのじゃが、三嶋さん
ちょっとアンタにも聞いてもらいたいことがあって呼んだんじゃ。
敦、お前の口から説明してくれるか」
吉川に言われて、敦は頷いた。
「おじさん、三嶋さん
わざわざ集まってもらってすいません…
今、おじさんから話があったように、昨日母が病院でガンと宣告されました。」
「ガン言うても、いろいろあるだろ?
ステージとかなんとか
光江さんは?」
三嶋が質問すると、敦は一呼吸置いて話し始めた。
「乳癌なんですが、既に肺に転移してまして、いわゆるステージⅣです。」
「そうなんか…」
「はい。
ただ、そうは言っても、ここから回復した人や、それ以上悪くならず、元気とは言わないまでもフツーに生活している人達がいるのも事実です。
だから、僕は可能性に賭けてみたいんです。」
「そうだな。
ワシもそれがええと思うぞ」
「三嶋さん、そうは言うてもな、光江さんを町の病院に入院させて、はい、それで終わりっちゅうわけにはいかんやろ。
家族の誰かが通いで付いといてやらんと」
吉川の言葉に三嶋は黙ったまま小さく頷いた。
「智に母の面倒を見てもらおうとも考えましたが、それだと母が遠慮してしまうのは目に見えてますし、ここは息子の自分が付いていてやるべきだと思ってます。」
「そうだな。
トモがいくら気立てが良くて光江さんと仲がええと言っても、所詮は嫁と姑の関係じゃからな」
「はい。
だから、智にはこっちで畑仕事を任せようと考えました。
しかし、今まで母と三人でなんとかやってきて、今は智と二人でギリギリ凌げてる感じなんです。
とてもじゃないが、智だけでは畑を守っていけないんです。」
「まあ、そうだな。
で、どうすんだ?」
「畑を手放そうと考えてます」
敦はそう言って俯いた。
智も莉愛もさっきから何も言わずに、敦の言葉を聞いてるだけだ。
「三嶋さん、相談ていうのはそういう事なんじゃ
畑をワシらで買い上げてやれんかってな」
「うーん…
そういう事か」
三嶋は難しそうな顔をして唸ってしまった。
吉川に呼ばれたからだ。
事務所には組合長の吉川の他に、副組合長の三嶋も来ていた。
「おう、来たか
まあ座れ」
吉川は智と敦に椅子を出してきて言った。
三人が座ると、吉川が話し始めた。
「三嶋さん、実はなあ
敦の母親が最近具合が悪いと言うとってな、医者に診てもらったんだが、診断の結果、ガンと言われちまってなあ」
「光江さんがか…」
「ワシも昨日連絡もろてびっくりしたんじゃ…
まあ、ここでグダグダ言うとっても何も始まらんのじゃが、三嶋さん
ちょっとアンタにも聞いてもらいたいことがあって呼んだんじゃ。
敦、お前の口から説明してくれるか」
吉川に言われて、敦は頷いた。
「おじさん、三嶋さん
わざわざ集まってもらってすいません…
今、おじさんから話があったように、昨日母が病院でガンと宣告されました。」
「ガン言うても、いろいろあるだろ?
ステージとかなんとか
光江さんは?」
三嶋が質問すると、敦は一呼吸置いて話し始めた。
「乳癌なんですが、既に肺に転移してまして、いわゆるステージⅣです。」
「そうなんか…」
「はい。
ただ、そうは言っても、ここから回復した人や、それ以上悪くならず、元気とは言わないまでもフツーに生活している人達がいるのも事実です。
だから、僕は可能性に賭けてみたいんです。」
「そうだな。
ワシもそれがええと思うぞ」
「三嶋さん、そうは言うてもな、光江さんを町の病院に入院させて、はい、それで終わりっちゅうわけにはいかんやろ。
家族の誰かが通いで付いといてやらんと」
吉川の言葉に三嶋は黙ったまま小さく頷いた。
「智に母の面倒を見てもらおうとも考えましたが、それだと母が遠慮してしまうのは目に見えてますし、ここは息子の自分が付いていてやるべきだと思ってます。」
「そうだな。
トモがいくら気立てが良くて光江さんと仲がええと言っても、所詮は嫁と姑の関係じゃからな」
「はい。
だから、智にはこっちで畑仕事を任せようと考えました。
しかし、今まで母と三人でなんとかやってきて、今は智と二人でギリギリ凌げてる感じなんです。
とてもじゃないが、智だけでは畑を守っていけないんです。」
「まあ、そうだな。
で、どうすんだ?」
「畑を手放そうと考えてます」
敦はそう言って俯いた。
智も莉愛もさっきから何も言わずに、敦の言葉を聞いてるだけだ。
「三嶋さん、相談ていうのはそういう事なんじゃ
畑をワシらで買い上げてやれんかってな」
「うーん…
そういう事か」
三嶋は難しそうな顔をして唸ってしまった。
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