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縮小均衡

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真弥が働いている間、美智香は家事をしつつ、引越し先の選定に時間を割いた。
とにかく、引越すなら早い方がいい。
経済的な面でそう考えるのではなく、達也の事が頭にあったからだ。
自分を探しているという情報を智から教えられて以来、ずっと心の奥底に引っかかっており、ふとした事で考えてしまい、落ち込む事も多々ある。

だからこそ、ここを突き止められる前に引越したいと考えていたのだ。

真弥の通勤の事も考えて、出来れば都内で物件を見つけたい。

たとえ古くても、狭くても、安くさえあればそれでいい。
真弥と一緒なら、住む器など全く気にならない。


熟考を重ね、真弥とも相談した結果、都内で少し郊外にある団地の1DKの部屋に決定し、早速申し込みを行った。

空き部屋があったのですぐに、決まった。

ただ、30平米と今住んでいる部屋の半分以下の面積で、家具などは大半を処分しなければならない。

二人は相談の結果、捨てるものは捨て、真弥の実家に置けるものは極力運び込もうということになり、休みの日を利用して運び込んだ。

真弥も美智香も、衣料品ですら処分出来るものは処分し、とことん身軽な状態で引越しをする事になった。

これから二人が生活する住居は、築48年の古くて狭い団地の六階にある一室で、これまでの生活からは想像も出来ないほど質素で慎ましいものになった。

引越し業者に全ての荷物を運び込んでもらい、二人で片付けをして、夕方には普通に住める状態までにした。

二人は手を止め、食事をすることにしたが
今日からは真弥の給料の中でやりくりしていく事を決めていた美智香は、ケトルでお湯を沸かし、カップラーメンで済ませる事にした。

勿論、真弥も文句を言わず、美智香にお湯を入れてもらったカップラーメンを受け取り、美味しそうに麺を啜った。

「ごめんね、真弥君
こんなので夜を済ませて」


「いや、全然大丈夫だよ。
なんか楽しいし
これからもすごい楽しみ」

極貧生活でも、二人なら幸せに暮らせる。

これだけは二人共はっきりと認識しており、さらなる結束を生むこととなった。
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