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新生活一年生

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「荷物ってこれで全部?」


「うん。」


「おわった、おわったー」


真弥の引越しは、主に衣類など、身の回り品が中心だった為、業者に頼む事なく、真弥と美智香の二人だけで、それも短時間で片付いてしまった。


「みっちゃん、至らない点ばかりの僕ですが、どうかよろしくお願いします。」


「こちらこそ。
私のワガママに付き合わせてごめんね。
でも、真弥君との生活、すごく楽しみ。」

二人は抱擁と、熱い口づけをした。


「じゃあ、私、ご飯作ってくるね。
簡単なものしか出来ないけど。」


「ありがとう
うれしい」

ご飯という言葉に、真弥は同棲を始めた実感をひしひしと感じ、満面の笑みを浮かべた。

美智香は冷蔵庫の中を覗き込み、何が作れるか瞬時に判断したが、若い真弥の趣向も鑑み、ちょうど買っておいた鶏肉を使い、グリルチキンのような料理を完成させた。

それに野菜をふんだんに使ったサラダ。
スープは恐縮しながら、インスタントのものを出した。

ご飯を茶碗に多めによそい、椅子に座って待つ真弥の前に並べて置いた。


「ごめんね。全然準備出来てなくて
あり物でテキトーに作ったんだけど」


「うわあ、美味そう

食べていい?」

「うん。」

「いただきます」

真弥は神妙な顔で手を合わすと、箸を持ち、お茶を一口。

それから野菜を口にした。

そして、スープを一口。

最後にメインのチキンを口に運んだ。

よく味わって噛み締めていたが、少しタイミングを置いて


「めちゃくちゃ美味い…」

と、目を見開いて言った。

「お口に合ったかな?」

「こんな美味しいの、食べた事ないよ
みっちゃん」

「ホント?
無理してない?」

「そんなのするわけないよ。

みっちゃんて何やらせても本当にすごいね。

ビックリしたよ」

真弥はそう言ってご飯をかきこんだ。


若い男そのものという豪快な食べ方に、美智香は少し見惚れてしまっていたが

「真弥君は何でも褒めてくれるのね。
でも、料理は一番自信ないのよ」

と、照れくさそうに笑って言った。

前の結婚生活を送っていた時も、料理自体は好きで、やらないという事はなかったが、共働きで、夫と同じ職場で遅くまで働いていた事もあり、仕事終わりに二人で外食で済ませる事も決して少なくはなかった。

美智香が本格的に料理を始めたのは、離婚後の事であり、僅か二年のキャリアと言っても過言ではなかった。


美智香は、自分も少量のチキンと多めのサラダを取り、ご飯は無しで、真弥に遅れて食べ始めた。


「みっちゃんと一緒に暮らしたら、こんな美味しい料理を毎日食べられるの?」

「大げさよ。
でも、毎日頑張って作るね。
迷惑じゃなかったら、お弁当も」


「えっ、ホントに!?

やったー」

真弥は子供のように喜んだ。

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