上 下
244 / 592

synchro

しおりを挟む
「美智香さん!」


待ち合わせ場所の駅前の広場に時間ギリギリで現れた真弥は、走ってきたのか息を切らしていた。


「すいません。
仕事が長引いちゃって」


「もう、走ってこなくて大丈夫よ。
ちゃんと待ち合わせ時間の前に来てくれてるんだし


あっ!それよりも
そのスーツ」


「はい。早速着てます。」

真弥は買ったばかりのスーツと、美智香にプレゼントしてもらったネクタイを見せて、照れくさそうに笑った。


「うん。
すごく似合ってるよ。

真弥君て背も高いし、顔も良いからスーツ姿がすごく映えるよね。」


「ありがとうございます。
美智香さんに褒められると舞い上がってしまいます」


「ご飯でも食べる?

今日は私に出させてよね」


「いえ、そんな

誘ったのは僕ですし」


「いいから、いいから」

美智香は恐縮する真弥を説き伏せて、個室のある洋風の居酒屋に案内した。


「ここね、お友達と一回来た事あるんだけど、雰囲気良かったから、また来たいって思ってたの」


エレベーターに乗り込むと、美智香は真弥に言った。

「へえ、そうなんですね

でも、すごく嬉しいです。
美智香さんが気に入ってる店に行けるの」


二人は個室に案内されたが、美智香がこの店を選んだのにはもう一つの大きな理由があった。

真弥との話を他人に聞かれたくないというのが最大の理由だった。

どう転んでも深刻な雰囲気になるだろうが、いい歳したオバサンと若い男の恋バナなんて恥ずかしくて聞かせられないという思いが頭をよぎったからだ。



「何飲む?」


「えっと、じゃあビールで。
美智香さんは?」


「じゃあ私も飲む」


テーブルのタブレットから美智香は生中を二つ注文した。

それから適当に何品か料理を頼み、ビールが来ると乾杯した。


真弥は仕事の話や、最近ハマっている事などを美智香に話したが、全ての料理が運ばれて、もう店員が入って来ないという事を確認すると、待ち構えていたように話題を変えた。

もちろん、自分と美智香の交際についてだ。


「一昨日は、美智香さんを困らせるような事を言ってしまい、本当に申し訳ありませんでした。」


「ううん。
それは気にしないで。
ただ、ちょっとびっくりしただけよ。」


「でも、あの時言ったのは僕の本当の気持ちです。

美智香さんの事が好きです。
その気持ちだけは何があっても揺らぎません。」


真弥はあくまでも真っ直ぐな言葉で、美智香にグイグイ迫ってきた。

やはり、面と向かってしまうと、劣勢になるのは仕方ない事…

美智香は真弥から目を逸らし、少しの間俯いていた。

だが、すぐに顔を上げ、真弥の方を見つめて言った。


「私も真弥君の事が好きよ」

と…

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生したら女に生まれ変わってて王太子に激愛されてる件

高見桂羅
恋愛
番外編を75話と76話の間に移動致しました。 話の時間軸は74話の後ですが、内容的な問題でソコに致しました。 学校帰りに建設中のビルから鉄骨が降ってきて死んでしまった少年が異世界、しかも女の子に転生してしまう。 さらに王太子の婚約者までいて… 困惑しながらも王太子に激愛される話です。 主人公は女ですが、転生前は男なので苦手な方はお気をつけください。 初投稿ですので至らないところもあるかと思いますがよろしくお願い致します

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

俺の婚約者は侯爵令嬢であって悪役令嬢じゃない!~お前等いい加減にしろよ!

ユウ
恋愛
伯爵家の長男エリオルは幼い頃から不遇な扱いを受けて来た。 政略結婚で結ばれた両親の間に愛はなく、愛人が正妻の扱いを受け歯がゆい思いをしながらも母の為に耐え忍んでいた。 卒業したら伯爵家を出て母と二人きりで生きて行こうと思っていたのだが… 「君を我が侯爵家の養子に迎えたい」 ある日突然、侯爵家に婿養子として入って欲しいと言われるのだった。

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く、が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

処理中です...