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しおりを挟むユウが一人暮らしをする部屋は少し郊外にあった。
新築に近いマンションで、ユウはその6階の2LDKに住んでいた。
三十を過ぎても可愛らしく若々しいユウと同じように、部屋の装飾もいかにも若い女子といった感じで、とても可愛い部屋だった。
「ユウちゃん、めっちゃ可愛いお部屋じゃん」
「そんな事ないよ。趣味がいかにもニューハーフって感じでしょ?」
そう言ってユウは笑った。
久しぶりの再会に二人の話は尽きる事がなく、お茶を飲みながら色々な話をした。
特にユウが話を聞いてほしそうだったので、智はもっぱら聞き役に回った。
「トモちゃんが敦さんと結婚して田舎に行った後、ワタシもしばらくはYouTubeと芸能活動を続けてたんだけど、なんかやる気が無くなってきて、このまま続けても先が見えてるなあなんて思うようになり、すっぱり辞めちゃったの」
「へえ、そうだったの…」
「そんなとき、ワタシのことを好きだっていう男性が現れて、お付き合いするようになって…
勿論籍入れてないけど、事実婚ていうの?
そういう関係になったんだ。
最初のうちは幸せに暮らしてたんだけど、結局は浮気されちゃって…
ワタシも人生でまともに恋愛なんてしてこなかったから耐性もなくて許せないし、大げんかして別れちゃった。
やっぱりどう足掻いてもフツーの女性には勝てないもんね」
「よくある話よね。
ワタシ達ニューハーフが好きになるのは、そういうマニアックな趣味を持つ男性じゃなくて、フツーに女性を好きなノーマルな男性達。
でも、そういう人は、フツーの女性と浮気しやすいし、最終的にはこっちが負けてしまうのがオチ。」
「うん、そうだね。
ワタシ、エッチも好きじゃなかったし、男性と付き合いたいとも思ってなかったから、一生一人でもいいって考えてたんだけど…
トモちゃんとエッチして、なんか目覚めてしまったっていうか、ワタシも誰かと結婚して家庭があって…
っていう人生が送れるかなって思ってしまったの。」
「うんうん」
「でも、ダメだった。
今は友達に紹介された介護の仕事をやりながら、一人で気ままに生きてるよ。
これが一番楽かなあ。」
ユウは少し寂しそうな表情を浮かべたが、笑って智に言った。
智も田舎に移り住んでから今に至るまでの話を赤裸々に語り、二人の話は夜中まで尽きる事がなかった。
「トモちゃん、めっちゃ苦労してるんだね」
「全然よ。
ワタシ的にはそんなに苦労してるなんて思ってないし…
でも、ワタシの悪い癖が出ちゃって、今回のAVもそうなんだけど、夫以外の男性と寝たりしてる事には罪悪感がある。」
「トモちゃん、エッチだもんね」
「それは否定出来ないわね。
やっぱり男性のおちんちんが大好きで、いろんなものを味わいたいって思っちゃう。
エッチっていうか淫乱ね」
「トモちゃんと出会った人はみんな好きになるもの。
ワタシもそうだから」
そう言うと、ユウは身を乗り出して智にキスをした。
キスを終えると、ユウは智を見つめ
「トモちゃんは今、幸せ?」
と、聞いた。
「えっ…
どうかなあ、生活はしんどいけど、まあ幸せかなあ。」
「こんな事言ったら怒られるかもしれないけど、ワタシは今でもトモちゃんの事が好き。
旦那さんから奪いたいくらいに…」
「えっ…」
「そんな事は勿論しないけど…
でも、この先、万が一…
万が一だよ。
旦那さんと別れるような事があったら、ワタシのところに来てほしい。」
「ユウちゃん…」
「ワタシ、もう男はいいわ。
二度と恋人も作らないし、同棲みたいな事もしない。
だって自分を偽って、卑下しながら捨てられないように必死に取り繕うのなんて馬鹿みたいだもん。
でも、トモちゃんと一緒のときは本当の自分を出す事が出来たし、すごく楽だった。
それと、何よりもトモちゃんが大好きで…
今日だって、あの頃と全く気持ちは変わらないわ。」
「ユウちゃん…ありがとう」
「あ、トモちゃんを困らせるつもりは全然ないのよ。
ただ、そうやって待ってるだけで幸せなんだもん」
ユウは少し涙目で言った。
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