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互助会

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「信じれんかもしれんが、この辺りでは夜這いの風習が残っておってな。
結婚してようがしてまいが、よその家の者と関係を持つということが当たり前のようにずっと行われてきておる。

今回はワシの順番でな
アンタを抱く事が決まっておった、最初からな。」


耳を疑うような吉川の話に智は驚き、当然の如く拒絶した。

「そんな事をいきなり言われても、お受けする事は出来ません。」



「まあ、そう言うだろうと思ったよ。

じゃあ、少し話を変えよう。

智さん、アンタは何も聞かされてないと思うが、伊東家が持つ畑の現状を知っとるか?」


「えっ、現状‥ですか?」


「ああ、そうじゃ。

昔と違ってな、ワシら農家は普通にやってさえすれば儲かる職業になった。

しかし、伊東家だけは上手くいかず、借金だらけなんじゃ。

そして、もう限界に来ておる。
ワシらの組合は両隣の村と合わせて互助会みたいなものを作っておってな、立ち行かなくなったところに融資して助ける制度がある。

しかし、それでも足らんで、伊東の親父と一番親しかったワシが金を都合して貸してやった。

それでも厳しい状況は変わっておらん。

更なる融資が無ければ、もうもたんじゃろう。
だが組合も銀行も返すアテのない者には絶対に金は出さん。

後はワシが出すか出さんかにかかっておる。」


「でも、なんでそんな事に‥」



「圭三はバカ正直すぎたんだ。

成功するかどうかもわからん有機農業に賭けやがって。

案の定、軌道に乗らずに失敗しちまって、多額の借金背負って死んじまった。」


「えっ‥」

「まあ、ワシもアイツとは昔から仲良かったし、真面目な男だったから、ワシも出来る限りの事はしたんじゃが、死んじまってはなあ。」


「そうだったんですか‥」
 

「光江さん一人では無理だし、畑を売るように言ってたんだが、まさか敦が帰ってきて跡を継ぐとは思ってもみんかった。」


「色々すみません‥」


「多分敦もそこまで自分の家の状況が悪いとは夢にも思っとらんじゃろう。」


「‥」


「しかし、敦もアンタもこんなとんでもない田舎で腰を据えて農業をしようと帰ってきた。

ワシらにとって、アンタらのような若者は宝と言っても過言じゃない。だから、敦とアンタの気持ちに応えて、金を出してやってもええと思うとる。」


「ありがとうございます。」


「弱みにつけ込んで頼むのは不本意なんじゃが、アンタの美貌にワシは完全にマイっちまってな。

どうしても抱きたいと思うとる」


「吉川さん、ワタシ、実は‥」

抱かれる事くらい風俗嬢だった智には低いハードルだったが、やはり話しておかなければならないと、自分の素性を明かす事にした。


しかし、吉川は

「トモさん、ワシはアンタのことはよーく知っておる」

と、はっきりとした口調で言ったのだった。
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