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安らぎのとき

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智と伊東が店の外で初めて会う日を迎えた。

「すいません、お待たせしました。」

智は駅の改札の外で待つ伊東のところに駆けつけながら言った。

「いえ、僕も今さっき来たところです。
莉愛ちゃんは大丈夫ですか?」

「ええ。普段は土曜日はお仕事してて、いつもベビーシッターさんに来ていただいてるので。」


「そうですか。
ご飯まだですよね?」

「はい。」

「じゃあ、先に何か食べましょう」

伊東は智を車に乗せ、駅のロータリーから大通りに出た。

「何か食べたいものあります?」

「いえ、何でも大丈夫ですよ」

「じゃあ、僕が学生の時からよく通ってたパスタ屋さんがあるんですけど、そこでもいいですか?」

「はい。」

伊東は最初からその店一択で来ていたが、智にOKをもらい安堵して、交差点を左折した。

車を十分ほど走らせると、その店「クッチーナ」はあった。

「えっと、何にします?

ここはまあ何でも美味しけど、オイル系とか、ボロネーゼもいけますよ。」

「じゃあ、ワタシ、ボロネーゼで。」

結局、二人共同じものを注文した。


伊東は水を一口飲み、少し緊張した様子で智に話しかけた。

「なんか、こういうところでお会いすると緊張しますね」

「ええ。ワタシもです」

智も少し照れたように俯き加減で笑った。

それもそのはず、店では激しいセックスをする二人も、昼間に外で会えば、どうしていいか戸惑い、何だかぎこちなくなるのだった。

それからパスタが運ばれてくるまでの時間と食べ終わってゆっくりお茶をする時間にお互いの話をするうちに、緊張感も無くなり、かなり打ち解ける事が出来た。

伊東は智が一流大学を出て一流企業に勤めていたのをあっさりと辞めてニューハーフとなり、現在に至るまでの話を聞き、目を白黒させながら感心した。

「まさに波瀾万丈ですね。
僕が田舎から教師になる為に出てきた話なんて何の面白みもないですよね。」

「いえ、先生の誠実なお人柄がよく出ていて素敵です。」

「いやあ、なんとも…」

伊東は照れて頭を掻いた。

それからしばらく会話を楽しんだ後、二人は店を出て
そこから車で十分ほどのところにあるラブホテルに入った。
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