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いよいよ二学期が始まる。
それに先立ち、智は莉愛を連れて小学校に見学と手続きのために訪れていた。
莉愛の担任となる2年1組の担任、伊東敦と顔を合わせ、話を聞いた。
伊東は見たところ三十そこそこで、半袖のポロシャツからのぞかせる両腕はよく日焼けしていて逞しい。
だが、顔つきはサラサラヘアーにメガネをかけ、その瞳は優しさに溢れている。体つきとのアンバランスさに思わず見惚れてしまった智だったが、気を取り直して、一番肝心な話を始めた。
智は担任の伊藤に、自分の素性について、包み隠さず全てを話した。
「伊東先生、私はこんな姿をしていますが、莉愛の父親です。」
「はい?‥
えっと、どういう事ですか‥」
いきなりの話に、伊東先生は理解出来ない様子で、智をまじまじと見つめた。
「私は元々男として暮らしており、奈々という妻がいました。
その彼女との間に生まれたのが莉愛なんです。
私は妻が妊娠している事を知らずに離婚し、その後ニューハーフとなりました。」
「‥」
「紆余曲折があり、妻と娘と三人で暮らし始めたのですが、妻が病気になり他界しました。
そして、こんな風体の人間に莉愛は渡せないと、妻の両親が親権における裁判を起こし、私は負けました。
それから娘は祖父母に育てられたのですが、その祖母も他界してしまい、再び娘と私は一緒に暮らす事になったのです。」
智の話をキョトンとして、ただ聞いていた伊東先生は、ハッとして智の顔をもう一度凝視した。
当然のように驚きをもって、智の頭のてっぺんから脚のつま先までをまじまじと見つめていたが、ハッとして
「あの、吉岡さんて‥
あのテレビに出てるトモさん?」
と、言った。
「あ、そうです。
恥ずかしながら‥」
「そうでしたか‥
あの番組大好きで毎週欠かさず見てるんです。
インテリニューハーフのトモさんでしたか!
最近は出てらっしゃらないけど。」
「すみません、ややこしい親で‥」
「いえ、失礼なリアクションをして申し訳ございません。
でも、ご心配なさらないで下さい。
一昔前ならいざ知らず、今はその方面の教育、ジェンダーレスというか…学校も力を入れています。
安心して莉愛ちゃんをお預け下さい。」
「ありがとうございます、先生。」
智はホッとすると共に、時代の移り変わりを身をもって感じた。
それに先立ち、智は莉愛を連れて小学校に見学と手続きのために訪れていた。
莉愛の担任となる2年1組の担任、伊東敦と顔を合わせ、話を聞いた。
伊東は見たところ三十そこそこで、半袖のポロシャツからのぞかせる両腕はよく日焼けしていて逞しい。
だが、顔つきはサラサラヘアーにメガネをかけ、その瞳は優しさに溢れている。体つきとのアンバランスさに思わず見惚れてしまった智だったが、気を取り直して、一番肝心な話を始めた。
智は担任の伊藤に、自分の素性について、包み隠さず全てを話した。
「伊東先生、私はこんな姿をしていますが、莉愛の父親です。」
「はい?‥
えっと、どういう事ですか‥」
いきなりの話に、伊東先生は理解出来ない様子で、智をまじまじと見つめた。
「私は元々男として暮らしており、奈々という妻がいました。
その彼女との間に生まれたのが莉愛なんです。
私は妻が妊娠している事を知らずに離婚し、その後ニューハーフとなりました。」
「‥」
「紆余曲折があり、妻と娘と三人で暮らし始めたのですが、妻が病気になり他界しました。
そして、こんな風体の人間に莉愛は渡せないと、妻の両親が親権における裁判を起こし、私は負けました。
それから娘は祖父母に育てられたのですが、その祖母も他界してしまい、再び娘と私は一緒に暮らす事になったのです。」
智の話をキョトンとして、ただ聞いていた伊東先生は、ハッとして智の顔をもう一度凝視した。
当然のように驚きをもって、智の頭のてっぺんから脚のつま先までをまじまじと見つめていたが、ハッとして
「あの、吉岡さんて‥
あのテレビに出てるトモさん?」
と、言った。
「あ、そうです。
恥ずかしながら‥」
「そうでしたか‥
あの番組大好きで毎週欠かさず見てるんです。
インテリニューハーフのトモさんでしたか!
最近は出てらっしゃらないけど。」
「すみません、ややこしい親で‥」
「いえ、失礼なリアクションをして申し訳ございません。
でも、ご心配なさらないで下さい。
一昔前ならいざ知らず、今はその方面の教育、ジェンダーレスというか…学校も力を入れています。
安心して莉愛ちゃんをお預け下さい。」
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