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忘形見

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智は久しぶりの休みをもらい、ベッドからなかなか出ずにボーっとした時間を過ごしていた。

そんな時間が暫く続いたかと思うと、急にしたくなり、バイブを取り出してオナニーを始めた。

朝から艶めかしい喘ぎ声を出し、バイブを出し入れし、すぐにイッてしまった。

続いて二回目に突入しようとした瞬間、枕元で充電していた携帯の呼び出し音が鳴った。

智は二回戦を諦め、電話に出る事にした。


「もしもし」

智が電話に出ると、向こうから、ややテンションが高めの反応が返ってきた。

「吉岡さん、ご無沙汰しています。
北見です。」

電話をしてきたのは弁護士の北見であった。

智が覚醒剤の使用を疑われたとき、活躍して不起訴処分を勝ち取ってくれた敏腕弁護士だが、娘の莉愛の親権を妻の両親と争った時には、さすがに不利を覆す事が出来ず敗れ去った。
だが、智は北見に継続して依頼をしており、娘との面会を求めたり、先方への働きかけの代理人を務めてもらっていた。

「北見さん、どうしたんですか?」

「吉岡さん、向こうから動きがありましたよ。」

「動き?

どういうことですか。」

「私も定期的に先方への連絡をしてはいたんですが、なかなか話をしてもらえず苦労していました。
ところが、昨日、娘さんのお祖父さん、高田さんから連絡があったんです。
あなたと話がしたいと。」

「えっ、ワタシとですか。

向こうも弁護士が?」

「いえ、御本人から直接でした。」

「‥」

「どうされますか?」

「勿論、会います。」

「こっちはもう何も失うものがありませんし、話をしても不利になる要素はないですからね。

わかりました。すぐに日程を調整します。」

智は、電話を切ると、あれだけ拒絶していた奈々の父俊之が、急に連絡をしてきた真意を掴みあぐね、頭を抱えた。
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