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「おはようございまーす」
智が事務所にやってくると、ユウ、スタッフと挨拶を交わした。
テレビ等のメディアに多く出演するようになり、スケジュール管理が難しくなった智は、ユウの勧めで、彼女が所属している芸能事務所でお世話になる事にしたのだ。
大手というほどのものではなかったが、ユウのようなユーチューバーが多く所属しており、言うなれば新興の勢いのある事務所で、
ユウのYouTubeも主に事務所の一室を使って撮影をしており、智がここに所属するのもごく自然な事であった。
この日は打ち合わせを行う予定で、マネージャーとユウと智の三人が会議室に集合した。
「トモちゃん、この前出た『教えて下さい』シリーズ、めっちゃ反響ありましたよ。」
マネージャーの菊地が、手元の資料に目を通しながら言った。
菊地亮太は、入社6年目、二十八歳の若手マネージャーで、それほどしっかりした人間ではなかったが、垂れ目で柔和な顔つきで、性格も温厚な為、智もすぐに慣れる事が出来た。
「そうなんですか?
ワタシ、あんまり発言出来なかったと思うんですけど。」
「いやいや、そんな事ないですよ。
結構難しい質問にも的確な答え出してたから、僕もびっくりしちゃいましたよ。」
「だったら良いんですけど。」
「トモちゃん、さすがだよ
ワタシも見てたけど、ほとんど何言ってるかわからなかったもん」
ユウは笑って舌を出した。
すっかりトモと仲良くなったユウは、互いに敬語を使わない事を決め、最近はタメ口で話すようになった。
と、言っても、ユウはまだ22歳で、智とは八つも歳が離れている。
それを智が説得して、お互いフランクな口調で話せるようになり、距離感が縮まったのだった。
ユウは男子として生を受けた事を微塵も感じさせず、俗にいうアイドル顔をしている。
身長も158と、ニューハーフとして生きる上で有利な要素を沢山持ち合わせている。
智は三十歳ではあるが、見た目は二十代前半と言われても疑われないくらいのものをキープしており、それでいて透明感があって相当な美貌の持ち主でもある。
この二人がコラボするようになってから、チャンネル登録者も飛躍的に増え、知名度もぐんと上がってきた。
「あ、本題に入っちゃいますけど、いいっすか?」
「どうぞ」
「トモちゃん、アイドルをやってみません?」
「はっ?
なんですか?」
「今ねユウちゃんが、男の娘アイドルとして頑張ってくれてるんですけど、トモちゃんにも参加してもらって、ユニットとして売り出したら、さらにハネる可能性があると思いましてね。」
「トモちゃん、ワタシからもお願い。
一緒にやれたら盛り上がると思うんだ。」
「待って待って!
あの、ワタシもう三十歳ですよ
こんなオジサン?オバさん?
まあ、どっちでもいいか。そんな高齢のアイドルなんて有り得ないですよ。
ましてや、ニューハーフのなんか」
「それは大丈夫です。
僕も色々リサーチしてますから。
ユウちゃんの人気も相当なものですけど、性別、年齢層の幅からすれば、トモちゃんの方がずっと広いんです。
二人で活動したら、全方位をカバー出来ます。」
「自分ではそうは思いませんけど。
アイドルユニットって、一体何をするんですか。」
「このご時世、CDなんて出しても、まあ売れやしません。
一昔前みたいに握手券なんて付けるやり方も、このご時世では無理です。
まあ、それでもライブはしたいっすね。
来てくれた人にはそれこそ写真撮影してあげたりするのもいいですし。
YouTubeも多くの登録者を抱えてて、コメ見ててもかなり熱いファンがいる事がわかります。
絶対に成功する自信を持ってます。」
「そんなに上手くいきますかねえ」
「トモちゃんとだったら、成功間違いなしよ。
ね、一緒にやろうよ。」
性格的にしつこく頼まれたら断れない智は、最終的には渋々受諾したのだった。
智が事務所にやってくると、ユウ、スタッフと挨拶を交わした。
テレビ等のメディアに多く出演するようになり、スケジュール管理が難しくなった智は、ユウの勧めで、彼女が所属している芸能事務所でお世話になる事にしたのだ。
大手というほどのものではなかったが、ユウのようなユーチューバーが多く所属しており、言うなれば新興の勢いのある事務所で、
ユウのYouTubeも主に事務所の一室を使って撮影をしており、智がここに所属するのもごく自然な事であった。
この日は打ち合わせを行う予定で、マネージャーとユウと智の三人が会議室に集合した。
「トモちゃん、この前出た『教えて下さい』シリーズ、めっちゃ反響ありましたよ。」
マネージャーの菊地が、手元の資料に目を通しながら言った。
菊地亮太は、入社6年目、二十八歳の若手マネージャーで、それほどしっかりした人間ではなかったが、垂れ目で柔和な顔つきで、性格も温厚な為、智もすぐに慣れる事が出来た。
「そうなんですか?
ワタシ、あんまり発言出来なかったと思うんですけど。」
「いやいや、そんな事ないですよ。
結構難しい質問にも的確な答え出してたから、僕もびっくりしちゃいましたよ。」
「だったら良いんですけど。」
「トモちゃん、さすがだよ
ワタシも見てたけど、ほとんど何言ってるかわからなかったもん」
ユウは笑って舌を出した。
すっかりトモと仲良くなったユウは、互いに敬語を使わない事を決め、最近はタメ口で話すようになった。
と、言っても、ユウはまだ22歳で、智とは八つも歳が離れている。
それを智が説得して、お互いフランクな口調で話せるようになり、距離感が縮まったのだった。
ユウは男子として生を受けた事を微塵も感じさせず、俗にいうアイドル顔をしている。
身長も158と、ニューハーフとして生きる上で有利な要素を沢山持ち合わせている。
智は三十歳ではあるが、見た目は二十代前半と言われても疑われないくらいのものをキープしており、それでいて透明感があって相当な美貌の持ち主でもある。
この二人がコラボするようになってから、チャンネル登録者も飛躍的に増え、知名度もぐんと上がってきた。
「あ、本題に入っちゃいますけど、いいっすか?」
「どうぞ」
「トモちゃん、アイドルをやってみません?」
「はっ?
なんですか?」
「今ねユウちゃんが、男の娘アイドルとして頑張ってくれてるんですけど、トモちゃんにも参加してもらって、ユニットとして売り出したら、さらにハネる可能性があると思いましてね。」
「トモちゃん、ワタシからもお願い。
一緒にやれたら盛り上がると思うんだ。」
「待って待って!
あの、ワタシもう三十歳ですよ
こんなオジサン?オバさん?
まあ、どっちでもいいか。そんな高齢のアイドルなんて有り得ないですよ。
ましてや、ニューハーフのなんか」
「それは大丈夫です。
僕も色々リサーチしてますから。
ユウちゃんの人気も相当なものですけど、性別、年齢層の幅からすれば、トモちゃんの方がずっと広いんです。
二人で活動したら、全方位をカバー出来ます。」
「自分ではそうは思いませんけど。
アイドルユニットって、一体何をするんですか。」
「このご時世、CDなんて出しても、まあ売れやしません。
一昔前みたいに握手券なんて付けるやり方も、このご時世では無理です。
まあ、それでもライブはしたいっすね。
来てくれた人にはそれこそ写真撮影してあげたりするのもいいですし。
YouTubeも多くの登録者を抱えてて、コメ見ててもかなり熱いファンがいる事がわかります。
絶対に成功する自信を持ってます。」
「そんなに上手くいきますかねえ」
「トモちゃんとだったら、成功間違いなしよ。
ね、一緒にやろうよ。」
性格的にしつこく頼まれたら断れない智は、最終的には渋々受諾したのだった。
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