152 / 615
restart
しおりを挟む
「えっ、それは残念だなあ。」
智は食堂でのパートを辞める事を店長の大里に伝えた。
「はい。ワタシみたいな元男でもお嫁さんにしてくれるっていう奇特な人が現れまして‥」
「いや、吉岡さんて、ハッキリ言ってすごい美人だから、元男とかにこだわらない人にとっては最高なんじゃないかな。
吉岡さんレベルの女性を、街を歩きまくっても見つける事は不可能だと思うよ。」
「そんな良いものじゃないですけど、ありがとうございます。」
「じゃあ、専業主婦になるんだ?」
「旦那さんになる人が、もう少ししたら海外勤務になるんで、ついて行くつもりなんですけど、もし、向こうで仕事が見つかれば、働きたいって思ってます。」
「うん。頑張ってね。」
大里は頷き、智に労いの言葉をかけた。
「おはようございます。」
そこに、パートの本林が出勤してきた。
「おはようございます。
あ、本林さん、吉岡さん今月いっぱいで辞めちゃう事になったんで。」
「えっ、そうなんですか」
本林は男性客から人気のある智の事が大嫌いだったので、辞めるという話を聞いて、驚きもせず、残念そうな素振りすらしなかった。
「後任の募集はかけてるから
って言っても、ずっとかけ続けてるんだけど。
しばらく、本林さんにも負担かけるけどよろしくね。」
「別に大丈夫です。」
本林は相変わらずの無表情で、エプロンを付け手洗いをした。
智は何か発言すると噛みつかれそうに感じ、何も言わずに頭だけ下げて、控室を出ていった。
ホールでは、いつものように仕事帰りの木村などが訪れ、活況を呈していた。
「お、トモちゃん
久しぶりだね、最近あまり店に入出てなかった?」
木村は智を見ると、すぐに声をかけてきた。
「はい、ちょっと忙しくて、お休みもらったりするのが多くなってました。」
「木村さん、もうすぐ辞めちゃうんだって、吉岡さん
残念だね。」
智の後ろにいた本林が割り込んできて、木村にそう告げた。
本林は智にはほとんど喋りかけてこないのに、木村などにはこうして智の話を平然とする。
「えーっ、トモちゃん辞めるの!?」
「そうなんです。今月いっぱいで。」
「そっか、それは残念だなぁ。
でも、トモちゃんはこんな店に置いとくの、もったいないって俺は思ってたし、良かったんじゃないかな。」
「こんな店で悪かったわね!」
当然の如く、本林は木村にツッコミを入れたが、目は笑ってなかった。
「い、いや、そういう意味じゃなくて、あの、本林さんも歳の割には若く見えるって」
「若くって、木村さん、私の歳知ってんの?」
「たしか、五十過ぎだったよね」
「木村さん、大嫌い」
現在48歳の本林が。ヘソを曲げてその場を去っていくと、智は気まずそうに、隣りのテープルを拭いた。
智は食堂でのパートを辞める事を店長の大里に伝えた。
「はい。ワタシみたいな元男でもお嫁さんにしてくれるっていう奇特な人が現れまして‥」
「いや、吉岡さんて、ハッキリ言ってすごい美人だから、元男とかにこだわらない人にとっては最高なんじゃないかな。
吉岡さんレベルの女性を、街を歩きまくっても見つける事は不可能だと思うよ。」
「そんな良いものじゃないですけど、ありがとうございます。」
「じゃあ、専業主婦になるんだ?」
「旦那さんになる人が、もう少ししたら海外勤務になるんで、ついて行くつもりなんですけど、もし、向こうで仕事が見つかれば、働きたいって思ってます。」
「うん。頑張ってね。」
大里は頷き、智に労いの言葉をかけた。
「おはようございます。」
そこに、パートの本林が出勤してきた。
「おはようございます。
あ、本林さん、吉岡さん今月いっぱいで辞めちゃう事になったんで。」
「えっ、そうなんですか」
本林は男性客から人気のある智の事が大嫌いだったので、辞めるという話を聞いて、驚きもせず、残念そうな素振りすらしなかった。
「後任の募集はかけてるから
って言っても、ずっとかけ続けてるんだけど。
しばらく、本林さんにも負担かけるけどよろしくね。」
「別に大丈夫です。」
本林は相変わらずの無表情で、エプロンを付け手洗いをした。
智は何か発言すると噛みつかれそうに感じ、何も言わずに頭だけ下げて、控室を出ていった。
ホールでは、いつものように仕事帰りの木村などが訪れ、活況を呈していた。
「お、トモちゃん
久しぶりだね、最近あまり店に入出てなかった?」
木村は智を見ると、すぐに声をかけてきた。
「はい、ちょっと忙しくて、お休みもらったりするのが多くなってました。」
「木村さん、もうすぐ辞めちゃうんだって、吉岡さん
残念だね。」
智の後ろにいた本林が割り込んできて、木村にそう告げた。
本林は智にはほとんど喋りかけてこないのに、木村などにはこうして智の話を平然とする。
「えーっ、トモちゃん辞めるの!?」
「そうなんです。今月いっぱいで。」
「そっか、それは残念だなぁ。
でも、トモちゃんはこんな店に置いとくの、もったいないって俺は思ってたし、良かったんじゃないかな。」
「こんな店で悪かったわね!」
当然の如く、本林は木村にツッコミを入れたが、目は笑ってなかった。
「い、いや、そういう意味じゃなくて、あの、本林さんも歳の割には若く見えるって」
「若くって、木村さん、私の歳知ってんの?」
「たしか、五十過ぎだったよね」
「木村さん、大嫌い」
現在48歳の本林が。ヘソを曲げてその場を去っていくと、智は気まずそうに、隣りのテープルを拭いた。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる