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団欒

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和俊の両親は、二人の為に寿司を注文してくれていたらしく、食卓に通されると、豪華な寿司桶が用意されていた。

もう、難しい話をされる事はなく、和俊の近況報告や、中学時代の思い出話に花が咲き
智も次第に慣れてきて、少しずつ会話に加わるようになった。


「智さん、T大なの?」

律子が聞くと、代わりに和俊が

「そうだよ。それも主席卒業だよ。」

と、さも自分の手柄のように答えた。

「すごいわね。この子なんて、寝る間も惜しんで受験勉強してたのに、結局落ちちゃって。」

「あ、でも敬大に現役合格するなんて、すごいと思います。」

智は律子に対して、必死にフォローを入れた。

「トモはいつもそう言ってくれるんだけど、イヤミにしか聞こえないんだよね。」

和俊は苦笑いを浮かべて、鮪の寿司を口に運んだ。

「それにしても、和俊

お前が引きこもりになってたのを、智さんが救ってくれたって言ってたが、一体何があったんだ?」

今度は博史が質問してきた。

「あー、俺が引きこもりになって二年くらい経った頃に、たまたま駅前のコンビニで、トモとバッタリ再会したんだよ。

そのときは、もう今のような女性の姿になってて、死ぬほど驚いたんだけど。

そこで、智と話して、励ましてもらったりして、何か前向きになれたっていうか、もう一度頑張ろうって思えたんだ。」

和俊は智の方に視線を送りながら、照れながら言った。

「そうだったのか。
ずっと引きこもりを続けるんじゃないかって心配してたんだが‥
急にやる気を出して、仕事を探し出したときは、一体どうなってるんだって思ったけど、そういうことがあったのか。

智さん、ありがとうございます。」

「いえ、ワタシは何も‥」

「あ、それと、この前電話で話した件だけど、俺、仕事でしばらくフランスに行く事になったんだ。
勿論、トモと一緒に。」

「そう言ってたわね。
でも、智さんが一緒だと私も安心だわ。」

律子は智の方を見て笑って言った。

「和俊、今回はこっちでゆっくり出来るんだろ?」

「うん。
悪いけど三泊ほどさせてもらうよ。
明日はトモのお姉さんに会う予定だし。」

「智さんも、馴れない環境かもしれませんが、ちゃんと新しい布団も用意していますので、ゆっくりして下さい。」

「ありがとうございます。
ワタシ、両親が小さい時に他界して、祖父母に育てられたんですが、もうその祖父母もいなくて、地元とは言っても帰る家が無いんです。
お言葉に甘えさせていただきます。」

「そうだったんですか。」 

「お墓参りとかに行く時は、必ず駅前のホテルに泊まる事にしてて‥

そのとき、偶然和俊さんと再会したんです。」

「あー、なるほど。
なんとなく話が見えてきました。」

緊張も幾分解けてきた智は、少しずつ会話に入るようになってきた。

結婚に向けての最大の難関である、和俊の両親への挨拶をクリア出来たことに、嬉しく思いながら‥
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