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真っ直ぐな愛
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ストレートに自分の気持ちをぶつけてくる和俊に、智は根負けしてしまった。
結局、次の二人の共通の休みである、五日後の水曜日に、不動産屋に一緒に行く約束をしたのだった。
智はいつもの如く、朝の五時まで働き、少しは睡眠の時間も欲しかったが、和俊ははやる気持ちを抑えきれず、午前十時過ぎに自宅を訪れた。
「もう、カズ
アンタ来るのが早すぎるよ」
智はパジャマ姿で、和俊を迎え入れながら文句を言った。
「ごめん、なんか、居ても立っても居られなくなって‥
俺の事は気にせず、もう少し寝てて。」
「そんなのムリに決まってるじゃん、
起きて準備するから。」
「うん。ホント申し訳ない」
和俊は顔の前で両手を合わせた。
智は急いで着替えとメイクと髪のセットを行った。
その姿を嬉しそうに見守る和俊。
「もう、まじまじと見るなよ」
智はブラを着けながら和俊を睨んだ。
「あ、ごめん」
「でも、アレだね。
カズにこんな姿を見せても、あんまり抵抗ないなあ。」
「あっ、それって俺を男として見てないんじゃない?」
「うーん‥
その逆かもね。」
「逆?」
「男として見てないから見せられるんじゃなくて、心許したから見せられてる‥
とも言える。」
「だったら、スゲー嬉しいんだけど。」
「まあ、短期間でこうなるってことは、相性がすごく良いかもねえ~」
智は横目で和俊を見て笑った。
「俺も思ってた!相性良いって。」
「もう、調子いいんだから。
でもね、ワタシって男だけど、もう男の時の心象ってあんまり残ってないのよね。
感性的には女性と変わらないものを持ってるって自負もあるのよ、実は。
だから、男の人とエッチしても、カラダの相性より、もっと重要視するものがあるの。」
「へえ、何なの?」
「例えばさあ、ニューハーフになってから、匂いに敏感になったの。
男の人の体臭とか。
単純に匂う、匂わないの話じゃなくて、その匂いがワタシに合うか合わないか‥
そういうのが大事だなって思ったりしてね。」
「えっ、俺はどう?」
和俊は少し焦りながら、智を見つめて言った。
「えっと、うん。
好きな匂いだった。
一緒にいてて安心出来るっていうか」
「ホント?
めちゃくちゃ嬉しいわ。」
和俊はホッとした様子で、満面の笑みを浮かべた。
智は、そんな彼の様子を見て、漠然とではあるが、このまま一緒にいたい‥いや、ひょっとしたら、自分と人生を共有する事になるのではないかと、一瞬ではあるが、頭をよぎった。
結局、次の二人の共通の休みである、五日後の水曜日に、不動産屋に一緒に行く約束をしたのだった。
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「まあ、短期間でこうなるってことは、相性がすごく良いかもねえ~」
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