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compassionate love

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久しぶりの再会に、大いに盛り上がった智と後藤は、夜の十時を回って、ようやく店を出た。

「後藤、今日はありがとう。すごく楽しかったわ。
遅くまで引っ張っちゃってごめんね。」

「いや、俺の方こそ。
明日休みだし、遅くなるのは全然余裕。

吉岡に会いたいって、ずっと思ってたら、こんな形で会う事が出来たし、自分の人生もまだまだ捨てたもんじゃないな。」

「ホント、大げさなんだから。」

「そうかな‥

あ、吉岡‥あの、また会ってくれるかな」

「なによ、そんなの当たり前じゃん。
こっちから言おうって思ってたとこだよ。」

「ありがとう、吉岡‥」

後藤は照れ臭そうな表情を浮かべ、笑った。

「後藤って
今どこに住んでんだっけ?」 

「俺?
俺は永和に住んでる」

「遠いね。」

「そうだね、勤務先からだと、少し離れてるね。それが、どうかしたの?」

「近くに住んでるんだったら、なんかもう一軒行きたい気分だったんだけど、そんな事したら完全に終電過ぎちゃうね。」

「あ、いいよいいよ、俺もそんな気分だったんだ。
行こうよ、タクシーで帰れば済む話だし。」

「ダメダメ、そんなのもったいないよ」

「ホント大丈夫だよ。」

「うーん‥

だったらさあ、ウチに泊まってく?
狭いとこだけど。」

「えっ、いいの?」

「後藤さえ良ければ。お金の節約になるでしょ?お布団もあるし。」

「行くよ、行く行く!」

「何よ、アンタそんなキャラだったっけ?」

がっつく後藤に、智は大笑いした。



「へえ、ここに住んでるんだ」

「前住んでたとこは、一人になったから引き払って、今はこのワンルームにね。」

「良いじゃん、俺の住んでるところよりも広いし。っていうか、女子の部屋って感じがする」

「そうかなあ、ニューハーフの気持ちでお部屋作りをしたら、大概こうなると思うよ。

なんか飲む?」

「あ、じゃあ、ビールある?」

「あるよ。そこに座っててよ
すぐに用意するね。」

智は冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

「なんか、いい匂いするね。カレー作ってたの?」

「ん?そうそう。
今日、アンタにジャガイモ出してもらったじゃん。
これを作ろうと思ってね。」

「厚かましいけど、ちょっと食べさせてよ。
俺、カレー大好きなんだよね。
特に家で作ったカレーが。」 

「あ、そうなの?
後藤のお母さんのカレーには遠く及ばないかもしれないけど、よかったら食べて。

いつも一人だから余っちゃって」

智は夕方作っておいたカレーの鍋に火を入れながら言った。

「先に飲んどいてね。」

智は、ビールと簡単なつまみを出し、自分は料理作りに専念したのだが、カレーだけでは申し訳ないと、サラダを作り、一緒にテーブルに運んだ。

「おっ、ありがとう」

後藤は飲んでいたビールのグラスをテーブルに置き、前に並べられたカレーとサラダに視線を移した。

「早速いただきます」

「お口に合うかどうかわかんないけど。」

後藤はスプーンで一掬いして、口に運んだ。

そして、十秒ほど味わった後

「あ、美味い!」

と言った。

「えーホント?」

智がドキドキしながら聞くと、後藤は何度も頷いた。

「マジでめっちゃ美味い。天才かよ、吉岡は」

「ありがとう。すごく嬉しい」   

智は顔を赤らめて喜んだ。

「吉岡って見た目もそうだけど、中身もいい女なんだな。」

「そんな事ないよ、料理は好きは好きだけどね。
でも、ちゃんと覚えたのは、ニューハーフになってからだよ。
それまでは何も出来なかったもん。」

「それもすごいな。」

「ワタシさあ、好きな男の人の為に料理作ってあげたり、言ってみたら尽くすのが根っから好きなのよ。
後藤が、美味しいって言ってくれて、もう嬉しくて仕方ないんだもん。」

「へえ、今どき、尽くす女なんて存在にしてないんじゃないの?
古いタイプなんだな、吉岡って。」

「ニューハーフの世界には案外多いかもよ、ワタシみたいな考えの人が。」

智は笑って言った。

後藤はそんな智の表情を見て、胸がむず痒くなるような気持ちになり、慌ててカレーをかき込んだ。
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