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残火
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裁判所の判断が出てから、一年の月日が経過した。
この間、智は誰とも会わず、仕事もしなかった。
ずっと家に閉じ籠る生活をし、友人のケイコ達を心配させた。
少しでも気分が変われば、自分に連絡してくるようにと伝えていたが、智からは一向に連絡が来ず、ソワソワしながら毎日を送るケイコだったが‥
そして、ついにこの日、強硬手段に出た。
智が現在住んでいるワンルームマンションに押しかけ、インターホンを鳴らし続けたのだ。
出てくるまでは帰らない覚悟で。
智は、最初は居留守を使って出て来ようとはしなかったが、三十分ほど経過したとき、いよいよ観念したのか、オートロックを解錠し、ケイコを招き入れた。
ケイコは緊張しながら、智の部屋に足を踏み入れた。
荒んだ生活をしているかと思ったが、部屋はきれいに掃除がされており、物が散乱しているという事もなかった。
しかし、ケイコが一番驚いたのは智自身の姿であった。
あれだけの美貌で、それでいて清楚な雰囲気も漂わせる、これまでのニューハーフの常識を覆す逸材として、AV等でも大人気だった智が、化粧もせず、髪は無造作に後ろで括り、ジャージ姿で目の前に立っている。
そして、異常な太り方をしていた。
よくよく聞いてみると、最初は食事も喉を通らず、40キロ台前半にまで痩せ細ったらしいのだが、その後、ストレスから過食症のような状態になり、逆にブクブク太っていったそうだ。
どう見ても100キロ以上はあるのではないかと思うくらいの変わりようで、しばらく言葉を失ったまま、見つめるだけであった。
智やケイコのようなニューハーフは、去勢や女性ホルモンの投与により、油断してるとすぐに太ってしまう傾向にある。
皮下脂肪も付きやすいのだが、それが程よい加減だと、体に丸みを帯びさせる効果があり、女性らしく見える。
だが、智のように度を超えてしまうと、ただのデブ女にしか見えない。
顔はむくみ、二重顎になり、胸はさらにボリュームアップしているが、それ以上にお腹がぽっこりと飛び出て、お尻や太腿も相当なセルライトが付いていると、服を着た上からでもハッキリ認識出来た。
「トモちゃん、その姿‥一体どうしちゃったのよ‥」
「驚きました?」
智は自嘲気味に言って笑った。
元々普通の男性だった者が、女性として生きるには女性ホルモンや手術などによるものだけではなく、本人の相当な努力が必要なのである。
智も、以前は女磨きを怠る事なく、常に向上心をもって生活していた。
しかし、生きる意味や気力を失ってしまった結果、このような姿に変わり果ててしまったのだった。
それでも、持って生まれた美貌は辛うじて健在で、太った女性が好きな男性が見れば、欲情してしまう体つきになっており、まだまだ女としての生活を諦める段階ではない‥
ケイコはそう思った。
この間、智は誰とも会わず、仕事もしなかった。
ずっと家に閉じ籠る生活をし、友人のケイコ達を心配させた。
少しでも気分が変われば、自分に連絡してくるようにと伝えていたが、智からは一向に連絡が来ず、ソワソワしながら毎日を送るケイコだったが‥
そして、ついにこの日、強硬手段に出た。
智が現在住んでいるワンルームマンションに押しかけ、インターホンを鳴らし続けたのだ。
出てくるまでは帰らない覚悟で。
智は、最初は居留守を使って出て来ようとはしなかったが、三十分ほど経過したとき、いよいよ観念したのか、オートロックを解錠し、ケイコを招き入れた。
ケイコは緊張しながら、智の部屋に足を踏み入れた。
荒んだ生活をしているかと思ったが、部屋はきれいに掃除がされており、物が散乱しているという事もなかった。
しかし、ケイコが一番驚いたのは智自身の姿であった。
あれだけの美貌で、それでいて清楚な雰囲気も漂わせる、これまでのニューハーフの常識を覆す逸材として、AV等でも大人気だった智が、化粧もせず、髪は無造作に後ろで括り、ジャージ姿で目の前に立っている。
そして、異常な太り方をしていた。
よくよく聞いてみると、最初は食事も喉を通らず、40キロ台前半にまで痩せ細ったらしいのだが、その後、ストレスから過食症のような状態になり、逆にブクブク太っていったそうだ。
どう見ても100キロ以上はあるのではないかと思うくらいの変わりようで、しばらく言葉を失ったまま、見つめるだけであった。
智やケイコのようなニューハーフは、去勢や女性ホルモンの投与により、油断してるとすぐに太ってしまう傾向にある。
皮下脂肪も付きやすいのだが、それが程よい加減だと、体に丸みを帯びさせる効果があり、女性らしく見える。
だが、智のように度を超えてしまうと、ただのデブ女にしか見えない。
顔はむくみ、二重顎になり、胸はさらにボリュームアップしているが、それ以上にお腹がぽっこりと飛び出て、お尻や太腿も相当なセルライトが付いていると、服を着た上からでもハッキリ認識出来た。
「トモちゃん、その姿‥一体どうしちゃったのよ‥」
「驚きました?」
智は自嘲気味に言って笑った。
元々普通の男性だった者が、女性として生きるには女性ホルモンや手術などによるものだけではなく、本人の相当な努力が必要なのである。
智も、以前は女磨きを怠る事なく、常に向上心をもって生活していた。
しかし、生きる意味や気力を失ってしまった結果、このような姿に変わり果ててしまったのだった。
それでも、持って生まれた美貌は辛うじて健在で、太った女性が好きな男性が見れば、欲情してしまう体つきになっており、まだまだ女としての生活を諦める段階ではない‥
ケイコはそう思った。
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