カジュアルセックスチェンジ

露呈

通常、男性の肉体に女性ホルモンを投与すると、正常な内分泌が阻害されて、その副作用として乳房が膨らんだりの効果をもたらす。

健康面では決して良くないのだが、大概は女性的な肉体を求めて手を出してしまうというのが正直なところであろう。

智もその考えの一人だったが、もう一つよく知られた副作用がある。

それは、少なからず鬱症状が出てしまうということだった。

落ち込んだり、よく泣いてしまったり感情の浮き沈みの沈む方が多く、酷いと自殺してしまう人もいる。

智のように胸が大きく膨らむ者もいれば、全然大きくならず、豊胸手術をする者もいて、効果に個人差があるように、一概に皆が鬱になるとはかぎらない。

智もたまに泣いてしまうときもあったが、ホルモン投与開始以来、鬱症状に苦しむ事は殆どなかった。

だが、最近は少しその症状が顔を出し、智を苦しめていた。
勿論ホルモンバランスの崩れによるものが大きかったが、女性としての生活に別れを告げ、男性として生きるようになったことや、体の事を隠して働かなければならないプレッシャー等、知らず知らずのうちに精神的な負担が溜まり、ふとした時に落ち込む事が多くなった。

奈々はそれを知ってか知らずか、無理をせず家では女として暮らす事を勧めてくれたし、貴島も智にとっては有難い提案をしてくれた。
貴島の提案については、奈々をまた裏切る事になるので二つ返事で応じる事は出来なかった。

だが、心の悲鳴が聞こえる今、熟考を重ねた上で、智は貴島の提案を受け入れる選択をしたのだった。

これがどのような結末を迎えるか、智自身わからなかったが。