カジュアルセックスチェンジ

検診

問題の検診だが、智の心配とは裏腹にそこまで心配のいるようなシステムではなかった。

中小企業ならではというか、検診は会社で行わず、別の会場に出向いて受けるというものだった。
組合保険に加入してる業者が一斉に集まるというもので、日にちによって分けられているので、同僚に見られるということはない。

だが、問題が全くないわけではなく、内科検診というか触診があるので、そこではシャツを捲って胸を直に見せなければならない。

レントゲンは白の無地のTシャツならばそのまま受けることが出来て、撮影車の中で行われる為大丈夫だったが。

それでも、内科検診は仕切りの中で行われるので、他の人達に見られるわけでもなく、医師の目さえクリアすれば、それでいい。

智の順番がきた。

中に通されると、初老の医師が腰掛けており、椅子に座るように促された。

智がこしかけると、目と首の辺りを両手で触診し、服を捲るように言われた。

智は、躊躇なく素早く胸を見せた。

医師は一瞬、「えっ？」という顔をしたが、何も言わず
聴診器をあてると、次は背中を向けさせ、同じように二、三度聴診器をあてた。

「はい、いいですよ」

と告げ、僅かな時間で終了した。

（なんだ、拍子抜けしたなあ）

智は胸を撫で下ろし、会社に戻った。

去勢している身で、さらに女性ホルモンも続けているわけで、この状況で男性として見られようとするのは、少々ムシが良すぎる話だが、一つ一つ問題をクリアして頑張ろうと誓ったのだった。

次に問題が起きるのは、まだ少し先の話である。