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家族

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「智!」

智が帰宅するや否や、奈々が興奮気味に何やら紙を持って、声をかけてきた。

「どうしたの?」

「来たよ!

莉愛の保育園の入園許可が!」 

「えっ、ホント?」

「まさか、申し込んでこんなに早く来るとは思ってもみなかったけどね。」

「だよね」

「これで、私も働けるね。」

「奈々、大丈夫?」

「大丈夫よ。もうあんな変なストーカー男も来る事ないし、ようやくだわ」

「そうだね」

「いよいよ、初就職に挑戦よ」

奈々は智と学生結婚したために、卒業後はそのまま家庭に入り、離婚後も莉愛が生まれた事と桐山の異常な束縛のせいで仕事をする事が出来なかった。
ようやく生活が落ち着いてきて、莉愛の保育園への入所も決まり、何も障害は無くなった。

「奈々はワタシなんかより、外でお勤めするのが似合ってるし」

「智、またワタシって言ってる。」

「あ、ごめん、家に帰るとついつい油断しちゃう。

俺より絶対成功すると思うよ。」


「そんな野望は持ってないけど、とにかく一度は働いてみたいって思ってたから、何でもいいからお仕事したいのよ。
家計の足しにもなるしね。」

「ありがとう。色々迷惑かけるけど、よろしくお願いします。」

「やめてよ、他人行儀な言い方。

智の方はどうなのよ、お仕事の方は。」


「うん。今のところ順調だよ。
でも‥」

「でも?」

「明日、健康診断なんだよね」

「えーっ、それヤバイじゃん!」

「ま、なるようになるわ」

智は開き直りの表情で上着を脱いだ。

「先にお風呂入っちゃうわ」

そう言って浴室の前に行き、洗面台の前に裸になって立った智だったが

「ちょっとヤバいよね」

と、呟き、鏡に映る自分の乳房を見つめた。
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