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新局面
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「えっ!あの男に会ったの!?」
智から桐山との一件を聞いた奈々は驚きの声を上げた。
智は桐山から提案された話は敢えて伏せて、その他の部分だけを掻い摘んで話した。
「向こうも奈々とは感情的になり過ぎるから、ワタシと話がしたいって言ってて。」
「智、もう限界だよ。警察に相談しよう。」
「ワタシとの話し合いには応じるみたいだから、出来る限りのことはしてみるよ。
それで変な動きをするようなら、今度こそ警察を頼ろう。
じゃないと、まだ何も行動を起こされてないだけに、警察も真剣に取り合ってくれないかもしれないし。」
智は桐山に言われた言葉を思い出していた。
たしかに直接的被害はまだ何もない。ここはやはり、自分が前面に出て奈々を守るしかない、そう心に誓った。
二日後の日曜の午後、自宅でくつろぐ智に電話がかかってきた。
桐山だった。
この前は二ヶ月間音沙汰なかったのに、今回は僅か二日でコンタクトを取ってきた。
交渉の為に互いの電話番号は交換していたが、こんなに早く‥
心理戦は桐山の方が一枚上手と言えた。
「もしもし、吉岡さん?
桐山です。
そろそろ2回目の交渉をしたくて電話しました。」
智は待ち合わせの約束をすると、電話を切った。
「智、アイツから?」
奈々が不安げに聞くと、智は頷いた。
「また話がしたいと言ってきたわ。
奈々に矛先が向かわないうちはワタシが対応するから、心配しないで。
それに、ちょっとでも下手な動きしたらすぐに警察に頼るつもりだし。」
「心配だよ、智
私も一緒に行くから。」
奈々は居ても立っても居られず、身支度を始めようと立ち上がったが、智が止めた。
「奈々が行くのは逆効果だよ。
莉愛を連れて行くのもあまり良くないし。
とりあえず、ワタシに任せて。」
そう告げると、智は素早く準備を済ませて家を出た。
約束の待ち合わせ場所である、最寄駅のロータリーに着くと、既に桐山の黒い外車が停まっていた。
そして、智に気付くと、車を降りてきて会釈をした。
「こんにちは、吉岡さん」
智は少しだけ頭を下げた。
桐山は智を助手席に乗せると、車を発進させ、東の方向に進みだした。
「桐山さん、どこに行くんですか?」
「落ち着いて話がしたいので、私の自宅まで」
「えっ、自宅って」
「大丈夫ですよ。ちゃんと掃除はしてありますから」
桐山はそう言うと、声を出して笑った。
十五分ほど車を走らせると、タワーマンション二棟が聳え立っているのが目に入ってきた。
「今ね、ここに住んでるんですよ。
ちょうど一ヶ月前に引っ越しましてね。」
智は愕然とした。
奈々の荷物を運び出したあのマンションはもっと遠くで、少なくとも智の家から車で一時間以上かかった。
それが、こんな近くに引越してきているとは。これでは生活圏がモロ被りし、ばったり会う可能性が出てくる。
桐山は車を地下駐車場に停め、先に車を出ると、助手席のドアを開けて智をエスコートした。
エレベーターで26階まで行ったところに桐山の現在の住まいがあった。
「そんなに広くないですが、どうぞ」
桐山はスリッパを出し、智をリビングに招き入れ、椅子に座らせたのだった。
ここまでは、完全に桐山のペースだった。
智から桐山との一件を聞いた奈々は驚きの声を上げた。
智は桐山から提案された話は敢えて伏せて、その他の部分だけを掻い摘んで話した。
「向こうも奈々とは感情的になり過ぎるから、ワタシと話がしたいって言ってて。」
「智、もう限界だよ。警察に相談しよう。」
「ワタシとの話し合いには応じるみたいだから、出来る限りのことはしてみるよ。
それで変な動きをするようなら、今度こそ警察を頼ろう。
じゃないと、まだ何も行動を起こされてないだけに、警察も真剣に取り合ってくれないかもしれないし。」
智は桐山に言われた言葉を思い出していた。
たしかに直接的被害はまだ何もない。ここはやはり、自分が前面に出て奈々を守るしかない、そう心に誓った。
二日後の日曜の午後、自宅でくつろぐ智に電話がかかってきた。
桐山だった。
この前は二ヶ月間音沙汰なかったのに、今回は僅か二日でコンタクトを取ってきた。
交渉の為に互いの電話番号は交換していたが、こんなに早く‥
心理戦は桐山の方が一枚上手と言えた。
「もしもし、吉岡さん?
桐山です。
そろそろ2回目の交渉をしたくて電話しました。」
智は待ち合わせの約束をすると、電話を切った。
「智、アイツから?」
奈々が不安げに聞くと、智は頷いた。
「また話がしたいと言ってきたわ。
奈々に矛先が向かわないうちはワタシが対応するから、心配しないで。
それに、ちょっとでも下手な動きしたらすぐに警察に頼るつもりだし。」
「心配だよ、智
私も一緒に行くから。」
奈々は居ても立っても居られず、身支度を始めようと立ち上がったが、智が止めた。
「奈々が行くのは逆効果だよ。
莉愛を連れて行くのもあまり良くないし。
とりあえず、ワタシに任せて。」
そう告げると、智は素早く準備を済ませて家を出た。
約束の待ち合わせ場所である、最寄駅のロータリーに着くと、既に桐山の黒い外車が停まっていた。
そして、智に気付くと、車を降りてきて会釈をした。
「こんにちは、吉岡さん」
智は少しだけ頭を下げた。
桐山は智を助手席に乗せると、車を発進させ、東の方向に進みだした。
「桐山さん、どこに行くんですか?」
「落ち着いて話がしたいので、私の自宅まで」
「えっ、自宅って」
「大丈夫ですよ。ちゃんと掃除はしてありますから」
桐山はそう言うと、声を出して笑った。
十五分ほど車を走らせると、タワーマンション二棟が聳え立っているのが目に入ってきた。
「今ね、ここに住んでるんですよ。
ちょうど一ヶ月前に引っ越しましてね。」
智は愕然とした。
奈々の荷物を運び出したあのマンションはもっと遠くで、少なくとも智の家から車で一時間以上かかった。
それが、こんな近くに引越してきているとは。これでは生活圏がモロ被りし、ばったり会う可能性が出てくる。
桐山は車を地下駐車場に停め、先に車を出ると、助手席のドアを開けて智をエスコートした。
エレベーターで26階まで行ったところに桐山の現在の住まいがあった。
「そんなに広くないですが、どうぞ」
桐山はスリッパを出し、智をリビングに招き入れ、椅子に座らせたのだった。
ここまでは、完全に桐山のペースだった。
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