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再起

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まさかの奈々との復縁を果たし、智自身、人生はわからないものだと感じた。

近い将来、再入籍をするつもりでいるが、戸籍上の性別変更をしていないのが奏功し、再婚自体のハードルはさほど高いものではない。

問題があるとすれば、やはり仕事の面である。
まだ定職に就けておらず、その事を考えると憂鬱になるばかりであった。
当面は働かなくても生活に困らないだけの蓄えはあるし、もう少し吟味してもいいと思う反面、子供の頃からエリート街道を突き進んできた智にとって、無職でいる期間が続く事は苦痛以外の何者でもなかった。

それならば奈々が働き、智が主婦をするという選択肢もあるのではないか?と奈々から提案があったが、莉愛がまだ小さい事と、街に出るとDV男に見つけられる可能性が高まるという二つの問題により却下された。

奈々も優秀で、大学時代は智とトップの座を争ったほど勉強が良くできた。
学生結婚で就職せずに家庭に入ったという点では多少不利な部分もあるが、今となっては智よりもはるかに仕事を見つけやすい。

そんな事を考えている間に時は流れ、奈々と莉愛との三人での生活も軌道に乗ってきた。

智はもう一度気を取り直して、仕事探しを始めた。
職安にも通ったが、やはり一致しない外見と性別がネックとなり、厳しい状況は変わらなかった。

ハローワークを出た智は、近くのファーストフード店で軽めの昼食を取り、二週に一度の女性ホルモンの注射を打つために、いつものクリニックに足を運んだ。

「トモちゃん!」

クリニックが入る雑居ビルのエレベーターの前で、ケイコに呼び止められた。

「ケイコさん」

「なによ、アナタ久しぶりじゃない
元気にしてた?」 

「おかげさまで、なんとか」

「注射打ちに来たの?」  

「はい、ホルモン注射です。」

「ワタシはプラセンタ。

ホント久しぶりね、ちょっと色々トモちゃんと話したいって思ってたところよ。
この後時間ある?」

「えっと、はい」

「じゃあ、先に終わったら待っててね。」

思えば、ニューハーフヘルスで働き出してからケイコと会う事がなくなり、久々の再会であった。
本来ならお茶してる状況でもないのだが、気が滅入っていた智は、自分の事を一番理解してくれているケイコに悩みを聞いて欲しいと思い、誘いに応じたのだった。
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