24 / 615
マイノリティ
しおりを挟む
「時代は変わったとはいえ、ワタシたちみたいなものが普通に働ける社会には程遠いわ」
ケイコは仕事が決まらず落ち込む智を慰めた。
「少し考えが甘かったんだと思います。
今までこういう事には一切苦労せずにすごしてきましたから。
ちょっと慢心がありました。」
智は水割りを一口飲むとため息をついた。
「ちょっといいですか?」
ケイコと智の会話に一つ席を空けたところに座っていた女性、いや、ニューハーフが話しかけてきた。
メイクも服装も派手だったが、宝塚風の美人ニューハーフは名前をアキと名乗った。
「すいません、お二人のお話を聞いちゃいまして」
「あ、いえいえ、別に内緒の話でも何でもないので」
智がそう言うと、アキはニコッと笑い本題に入った。
「ワタシ、ニューハーフヘルスで働いてて、不躾で大変失礼なんですけど、もし、よかったらお仕事が見つかるまでウチで働いてみませんか」
「えっ」
「ごめんなさい。こんな話をいきなりして。
でも、トモさん?でしたっけ。あまりにも美人なんで、どうしてもお声をお掛けしたくて。」
「いえ、美人なんかじゃないです。
ニューハーフヘルスですか。
ワタシ、ニューハーフ歴が短くて、まだまだ知らない事が多いんです。」
「こんな事言ってはなんですが、確かに女性として昼間のお仕事をしている人はいますでしょうが、大部分はワタシのように風俗や水商売で生計を立ててると思います。」
「たしかにそうでしょうね」
ケイコが言葉を挟んだ。
「風俗以外だとショーパブ、それからこのようなバー等も選択の一つには入ると思います。」
「ワタシ、お酒も強くないし、お肌の為にも夜遅くまでの仕事はムリかなって考えてて」
智がそう答えると、アキは頷いた。
「ワタシもそうですし、他にもショーパブから流れてきた人もけっこういます。」
「そうですか」
「もしよかったら、一度ウチに来てお話だけでも聞いてもらえませんか。
それで合わないと思えば全然断ってもらってもいいですから。」
智はケイコの方にチラッと視線を向けたが、あまり良い顔をしていなかった。
しかし、エリート街道を進んできたにも関わらず、仕事が全く見つからない現状に、智は少し精神的にマイっており、話だけ聞く事をアキに約束した。
後日、店に話を聞きにいった智は、好奇心からか、あっさりと入店を決めた。
出勤時間は14時~20時で、週に3勤。
翌日には写真撮影も済ませ、準備万端で初日を迎えた。
ケイコは仕事が決まらず落ち込む智を慰めた。
「少し考えが甘かったんだと思います。
今までこういう事には一切苦労せずにすごしてきましたから。
ちょっと慢心がありました。」
智は水割りを一口飲むとため息をついた。
「ちょっといいですか?」
ケイコと智の会話に一つ席を空けたところに座っていた女性、いや、ニューハーフが話しかけてきた。
メイクも服装も派手だったが、宝塚風の美人ニューハーフは名前をアキと名乗った。
「すいません、お二人のお話を聞いちゃいまして」
「あ、いえいえ、別に内緒の話でも何でもないので」
智がそう言うと、アキはニコッと笑い本題に入った。
「ワタシ、ニューハーフヘルスで働いてて、不躾で大変失礼なんですけど、もし、よかったらお仕事が見つかるまでウチで働いてみませんか」
「えっ」
「ごめんなさい。こんな話をいきなりして。
でも、トモさん?でしたっけ。あまりにも美人なんで、どうしてもお声をお掛けしたくて。」
「いえ、美人なんかじゃないです。
ニューハーフヘルスですか。
ワタシ、ニューハーフ歴が短くて、まだまだ知らない事が多いんです。」
「こんな事言ってはなんですが、確かに女性として昼間のお仕事をしている人はいますでしょうが、大部分はワタシのように風俗や水商売で生計を立ててると思います。」
「たしかにそうでしょうね」
ケイコが言葉を挟んだ。
「風俗以外だとショーパブ、それからこのようなバー等も選択の一つには入ると思います。」
「ワタシ、お酒も強くないし、お肌の為にも夜遅くまでの仕事はムリかなって考えてて」
智がそう答えると、アキは頷いた。
「ワタシもそうですし、他にもショーパブから流れてきた人もけっこういます。」
「そうですか」
「もしよかったら、一度ウチに来てお話だけでも聞いてもらえませんか。
それで合わないと思えば全然断ってもらってもいいですから。」
智はケイコの方にチラッと視線を向けたが、あまり良い顔をしていなかった。
しかし、エリート街道を進んできたにも関わらず、仕事が全く見つからない現状に、智は少し精神的にマイっており、話だけ聞く事をアキに約束した。
後日、店に話を聞きにいった智は、好奇心からか、あっさりと入店を決めた。
出勤時間は14時~20時で、週に3勤。
翌日には写真撮影も済ませ、準備万端で初日を迎えた。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
婚約破棄はいいですが、あなた学院に届け出てる仕事と違いませんか?
来住野つかさ
恋愛
侯爵令嬢オリヴィア・マルティネスの現在の状況を端的に表すならば、絶体絶命と言える。何故なら今は王立学院卒業式の記念パーティの真っ最中。華々しいこの催しの中で、婚約者のシェルドン第三王子殿下に婚約破棄と断罪を言い渡されているからだ。
パン屋で働く苦学生・平民のミナを隣において、シェルドン殿下と側近候補達に断罪される段になって、オリヴィアは先手を打つ。「ミナさん、あなた学院に提出している『就業許可申請書』に書いた勤務内容に偽りがありますわよね?」――
よくある婚約破棄ものです。R15は保険です。あからさまな表現はないはずです。
※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』にも掲載しています。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
えっと、幼馴染が私の婚約者と朝チュンしました。ドン引きなんですけど……
百谷シカ
恋愛
カメロン侯爵家で開かれた舞踏会。
楽しい夜が明けて、うららかな朝、幼馴染モイラの部屋を訪ねたら……
「えっ!?」
「え?」
「あ」
モイラのベッドに、私の婚約者レニー・ストックウィンが寝ていた。
ふたりとも裸で、衣服が散乱している酷い状態。
「どういう事なの!?」
楽しかった舞踏会も台無し。
しかも、モイラの部屋で泣き喚く私を、モイラとレニーが宥める始末。
「触らないで! 気持ち悪い!!」
その瞬間、私は幼馴染と婚約者を失ったのだと気づいた。
愛していたはずのふたりは、裏切り者だ。
私は部屋を飛び出した。
そして、少し頭を冷やそうと散歩に出て、美しい橋でたそがれていた時。
「待て待て待てぇッ!!」
人生を悲観し絶望のあまり人生の幕を引こうとしている……と勘違いされたらしい。
髪を振り乱し突進してくるのは、恋多き貴公子と噂の麗しいアスター伯爵だった。
「早まるな! オリヴィア・レンフィールド!!」
「!?」
私は、とりあえず猛ダッシュで逃げた。
だって、失恋したばかりの私には、刺激が強すぎる人だったから……
♡内気な傷心令嬢とフェロモン伯爵の優しいラブストーリー♡
側妃のお仕事は終了です。
火野村志紀
恋愛
侯爵令嬢アニュエラは、王太子サディアスの正妃となった……はずだった。
だが、サディアスはミリアという令嬢を正妃にすると言い出し、アニュエラは側妃の地位を押し付けられた。
それでも構わないと思っていたのだ。サディアスが「側妃は所詮お飾りだ」と言い出すまでは。
「私が愛するのは王妃のみだ、君を愛することはない」私だって会ったばかりの人を愛したりしませんけど。
下菊みこと
恋愛
このヒロイン、実は…結構逞しい性格を持ち合わせている。
レティシアは貧乏な男爵家の長女。実家の男爵家に少しでも貢献するために、国王陛下の側妃となる。しかし国王陛下は王妃殿下を溺愛しており、レティシアに失礼な態度をとってきた!レティシアはそれに対して、一言言い返す。それに対する国王陛下の反応は?
小説家になろう様でも投稿しています。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
聖女は妹ではありません。本物の聖女は、私の方です
光子
恋愛
私の双子の妹の《エミル》は、聖女として産まれた。
特別な力を持ち、心優しく、いつも愛を囁く妹は、何の力も持たない、出来損ないの双子の姉である私にも優しかった。
「《ユウナ》お姉様、大好きです。ずっと、仲良しの姉妹でいましょうね」
傍から見れば、エミルは姉想いの可愛い妹で、『あんな素敵な妹がいて良かったわね』なんて、皆から声を掛けられた。
でも違う、私と同じ顔をした双子の妹は、私を好きと言いながら、執着に近い感情を向けて、私を独り占めしようと、全てを私に似せ、奪い、閉じ込めた。
冷たく突き放せば、妹はシクシクと泣き、聖女である妹を溺愛する両親、婚約者、町の人達に、酷い姉だと責められる。
私は妹が大嫌いだった。
でも、それでも家族だから、たった一人の、双子の片割れだからと、ずっと我慢してきた。
「ユウナお姉様、私、ユウナお姉様の婚約者を好きになってしまいました。《ルキ》様は、私の想いに応えて、ユウナお姉様よりも私を好きだと言ってくれました。だから、ユウナお姉様の婚約者を、私に下さいね。ユウナお姉様、大好きです」
――――ずっと我慢してたけど、もう限界。
好きって言えば何でも許される免罪符じゃないのよ?
今まで家族だからって、双子の片割れだからって我慢してたけど、もう無理。
丁度良いことに、両親から家を出て行けと追い出されたので、このまま家を出ることにします。
さようなら、もう二度と貴女達を家族だなんて思わない。
泣いて助けを求めて来ても、絶対に助けてあげない。
本物の聖女は私の方なのに、馬鹿な人達。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる