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マイノリティ

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「時代は変わったとはいえ、ワタシたちみたいなものが普通に働ける社会には程遠いわ」

ケイコは仕事が決まらず落ち込む智を慰めた。

「少し考えが甘かったんだと思います。
今までこういう事には一切苦労せずにすごしてきましたから。
ちょっと慢心がありました。」

智は水割りを一口飲むとため息をついた。

「ちょっといいですか?」

ケイコと智の会話に一つ席を空けたところに座っていた女性、いや、ニューハーフが話しかけてきた。

メイクも服装も派手だったが、宝塚風の美人ニューハーフは名前をアキと名乗った。

「すいません、お二人のお話を聞いちゃいまして」

「あ、いえいえ、別に内緒の話でも何でもないので」

智がそう言うと、アキはニコッと笑い本題に入った。

「ワタシ、ニューハーフヘルスで働いてて、不躾で大変失礼なんですけど、もし、よかったらお仕事が見つかるまでウチで働いてみませんか」

「えっ」

「ごめんなさい。こんな話をいきなりして。
でも、トモさん?でしたっけ。あまりにも美人なんで、どうしてもお声をお掛けしたくて。」

「いえ、美人なんかじゃないです。
ニューハーフヘルスですか。
ワタシ、ニューハーフ歴が短くて、まだまだ知らない事が多いんです。」

「こんな事言ってはなんですが、確かに女性として昼間のお仕事をしている人はいますでしょうが、大部分はワタシのように風俗や水商売で生計を立ててると思います。」

「たしかにそうでしょうね」

ケイコが言葉を挟んだ。

「風俗以外だとショーパブ、それからこのようなバー等も選択の一つには入ると思います。」

「ワタシ、お酒も強くないし、お肌の為にも夜遅くまでの仕事はムリかなって考えてて」

智がそう答えると、アキは頷いた。

「ワタシもそうですし、他にもショーパブから流れてきた人もけっこういます。」

「そうですか」

「もしよかったら、一度ウチに来てお話だけでも聞いてもらえませんか。
それで合わないと思えば全然断ってもらってもいいですから。」

智はケイコの方にチラッと視線を向けたが、あまり良い顔をしていなかった。

しかし、エリート街道を進んできたにも関わらず、仕事が全く見つからない現状に、智は少し精神的にマイっており、話だけ聞く事をアキに約束した。

後日、店に話を聞きにいった智は、好奇心からか、あっさりと入店を決めた。

出勤時間は14時~20時で、週に3勤。
翌日には写真撮影も済ませ、準備万端で初日を迎えた。
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