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決意
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今まで知らなかった世界に足を踏み入れた智の毎日は新鮮で楽しいものに変わっていった。
頻繁に「スマイキー」に行き女装姿でケイコと飲み、そこで沢山の男達からナンパされたり口説かれたりした。
女性として扱われる事に高揚し嬉しく思う智だったが、さすがに一線を越える勇気はなく
酒場で会話を楽しむだけにしていた。
それでも段々慣れてくると、自宅で女装して「スマイキー」に一人で訪れることも多くなり、すっかりこの世界にハマってしまった。
女装に関しても熱心に勉強を重ね
今では誰の助けも無しに完璧に変身出来るようになっていた。
その日もケイコと店を訪れ、他愛もない話をしていたが、智は何やら思いに耽っていた。
女装するのは楽しいし、みんな誉めてくれる。
それはそれで満足はしているが、やはり何かが足りないような気がする。
ケイコにあって智にないもの。
(そうだ。やっぱりこれが足りないんだ)
智は意を決してケイコに言った。
「ケイコさん、ワタシも女性ホルモンの注射を打ってみようと思うんですけど。
ケイコさんのような胸になりたいなって。」
ケイコは智の宣言に暫し言葉を発せられなかったが、気を取り直して
「ちょっと、トモちゃん
早まっちゃダメよ。」と嗜めた。
「気持ちはわかるわ。
どんどんエスカレートしていくこともね。
でも、趣味の範疇で留めておくべきよ。
プロのニューハーフになるならまだしも
仕事にも支障が出てくるわ。」
ケイコの言うことは智にもよくわかっていた。
しかし・・
「ケイコさん、ワタシ
そのプロのニューハーフになろうと考えてます。
勿論、今の仕事を辞めて。」
ここのところずっと考え、そして導きだした答えを言う智に、冷静にさせようとするケイコ。
「待って。
せっかく一流企業で働けているのにもったいないわ。
だからこそ趣味で留めておくべきなの。」
「本当の自分を見つけてしまったのです。
今の仕事に何の未練もありません。
全て覚悟は出来ています。」
智の揺るぎのない考えに、ケイコは説得を諦めた。
「・・・
そこまで言うならワタシは何も言えないわ。
自分の人生を他人が決めるわけにはいかないものね。」
(確かにこの子は磨けば相当なところまでいけるかも。
元々のルックス、肌質、線の細さ
わたしたちが努力しても手に入れられないものを最初から持っているんだもの。)
ケイコは智を見つめながらそう思った。
「わかったわ
ワタシに出来ることがあれば何でも言ってね。
ね、ママも応援してあげて。」
「アンタ逹、本当ぶっ飛んでるわね。
まあ、とりあえず乾杯しましよ。
トモちゃんの新たなる門出を祝って。」
ママは呆れた表情を浮かべながらワインの栓を抜いた。
頻繁に「スマイキー」に行き女装姿でケイコと飲み、そこで沢山の男達からナンパされたり口説かれたりした。
女性として扱われる事に高揚し嬉しく思う智だったが、さすがに一線を越える勇気はなく
酒場で会話を楽しむだけにしていた。
それでも段々慣れてくると、自宅で女装して「スマイキー」に一人で訪れることも多くなり、すっかりこの世界にハマってしまった。
女装に関しても熱心に勉強を重ね
今では誰の助けも無しに完璧に変身出来るようになっていた。
その日もケイコと店を訪れ、他愛もない話をしていたが、智は何やら思いに耽っていた。
女装するのは楽しいし、みんな誉めてくれる。
それはそれで満足はしているが、やはり何かが足りないような気がする。
ケイコにあって智にないもの。
(そうだ。やっぱりこれが足りないんだ)
智は意を決してケイコに言った。
「ケイコさん、ワタシも女性ホルモンの注射を打ってみようと思うんですけど。
ケイコさんのような胸になりたいなって。」
ケイコは智の宣言に暫し言葉を発せられなかったが、気を取り直して
「ちょっと、トモちゃん
早まっちゃダメよ。」と嗜めた。
「気持ちはわかるわ。
どんどんエスカレートしていくこともね。
でも、趣味の範疇で留めておくべきよ。
プロのニューハーフになるならまだしも
仕事にも支障が出てくるわ。」
ケイコの言うことは智にもよくわかっていた。
しかし・・
「ケイコさん、ワタシ
そのプロのニューハーフになろうと考えてます。
勿論、今の仕事を辞めて。」
ここのところずっと考え、そして導きだした答えを言う智に、冷静にさせようとするケイコ。
「待って。
せっかく一流企業で働けているのにもったいないわ。
だからこそ趣味で留めておくべきなの。」
「本当の自分を見つけてしまったのです。
今の仕事に何の未練もありません。
全て覚悟は出来ています。」
智の揺るぎのない考えに、ケイコは説得を諦めた。
「・・・
そこまで言うならワタシは何も言えないわ。
自分の人生を他人が決めるわけにはいかないものね。」
(確かにこの子は磨けば相当なところまでいけるかも。
元々のルックス、肌質、線の細さ
わたしたちが努力しても手に入れられないものを最初から持っているんだもの。)
ケイコは智を見つめながらそう思った。
「わかったわ
ワタシに出来ることがあれば何でも言ってね。
ね、ママも応援してあげて。」
「アンタ逹、本当ぶっ飛んでるわね。
まあ、とりあえず乾杯しましよ。
トモちゃんの新たなる門出を祝って。」
ママは呆れた表情を浮かべながらワインの栓を抜いた。
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