Two seam

壮行会

「ついに明日予選が始まりますね」


「はい。すごく緊張しています。」


「優里さんにとっては一年生の夏に続き、二度目の地区予選ですが、気持ち的な部分での変化はありますか。」


「一年生のときはプレッシャーも全然なくて、ワクワクしながら投げてました。

でも、今はあの時のような球速も無いですし、性転換したりブランクが長かったりしたんで、全然自信もないですし、とにかく今の力を精一杯出せるように頑張りたいですね。」


優里は密着取材をしているテレビ局のインタビューにそう答えた。


インタビューが終わると体育館に移動し、地区予選前としては珍しい壮行会に出席した。


舞台上に野球部員全員が整列し、他の生徒たちからの激励を受けた。

優里だけがスカート姿で、一見するとマネージャーに見えなくもないビジュアルだが、れっきとしたエースピッチャーなのである。

壮行会は大いに盛り上がり、最後は主将の田宮大吾のスピーチで締め括られた。

「みなさん、僕たちのためにこのような壮行会を開いていただき本当に有難うございます。

明日から地区予選が始まりますが、皆さんの応援を自分達の力に変えて精一杯がんばってきます！

そして、八月にまたここで壮行会をしていただけるようにしたいです！」

野球部全員が深々と頭を下げ、壮行会は終了。

全員が臨戦体制になった。


その後グランドで全体練習をした後、村上は全員を集めて訓示を行なった。


「明日から予選が始まるが、例年より注目されてプレッシャーを感じたり不安に思っている者がいるかもしれない。

だが、そんなものを感じる必要はない。

君たちは自分にできる範囲の事を精一杯やってくれれば、俺はそれ以上を求めるような事はしない。
だから、決して悔いの残る戦いだけはしないでほしい。

結果については俺が全ての責任を持つ。

いいな！」


「はいっ！」

全員が元気よく返事した。


「よし、今日は早く帰ってゆっくり休むように！

解散！！」


いよいよ咲聖の第一戦、浅丘高校との試合が幕を開ける